そーる

バビロンのそーるのネタバレレビュー・内容・結末

バビロン(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

実はこの作品を映画館で鑑賞してから
レビューも書けず、他の映画も観る気もおきず、
それだけ度肝を抜かれた作品でした。


ようやく自分の中で腑に落ちたのでメモがわりに書きたいと思います。

まず配役が的確すぎてぐうの音も出ません。
マニー役のディエゴカルバ、ネリー役のマーゴットロビー、ジャック役のブラッドピット、、
他に配役を考えたら?ということすら言えないほどこの御三方以外考えられません。

1920年代、サイレント映画からトーキーへ移行してゆくハリウッドを舞台に、
ショービズという大きな流れの一部になりたいと夢見る男、田舎から出てきた女、トップに君臨する男、という主人公たち。
オムニバス形式で話は進みます。
※演奏家のシドニー役が『オーヴァーロード』のジョヴァンアデポなのは見終わった後のクレジットで知りました。カメレオンすぎます。凄い。

ストーリーについては語りたいことがたくさんあるのですが、
この監督のすごいところは悲壮感まとう男を映し出すのが本当にうまい、、、
一足先に駆け上がるネリーを横目に見るマニーの姿、この世に疲れ別れを告げる前のジャックの背中、、、
ララランドの時もそうでしたが、個人的にこの監督はここが好きです。

また、マニーがのし上がりショービズ界でのポジションが上がった姿を冒頭のパーティ場の外でタバコを吸うシーンと中盤のスタジオから出て一服するシーンのみの対比で表現している様が半端じゃなく秀逸でした。

個人的に好きなシーンはやはり、
トーキーに乗り出したジャックが苦悩するシーンです。
演劇上がりの妻にあれこれ言われ怒るシーン、
長年やってきた記者と対峙するシーン、
この二つのブラピの演技がとても良い。
そしてセリフもいい、、、
避けられない新しい波に、期待と不安を抱いて乗ろうとするも砕かれる。
どこに当たっていいかも分からないこの気持ち。
『お前たちはゴキブリだ、人の家に巣食うゴキブリだ。人のことを好き勝手しやがって』と。
それに対する記者のセリフもいい。
『ゴキブリよ。暗闇の中でじっと生きる。だけどあなたはスポットライトを浴びることを求めたのね』と。

長年歩んできた2人だからこそできる掛け合い。
しかし一世を風靡したこの俳優と記者も、
ショービズという"大きな循環"の中では"一世を風靡した"に過ぎない。

ここに圧倒されます。
それがわかるのはラストシーンですよね。
マニーの晩年を通して見えてくる答えです。

夢見た世界、その一部になることが夢だったはずなのにいつしかその中心にずっと在り続けたいと思うようになっていた。
そこから梯子を外された時、悔やみ悲しむが
果たしてその感情は『その一部になることが夢』という目線で見れば正しいのだろうか?

猛烈な映画の歴史を怒涛に見せつけられた後、
笑顔とも泣き顔とも取れるマニーが座るはシアターの中。
そう、この映画を鑑賞している我々と同じなのです。

ショービズという大きな循環の中で、
我々鑑賞者もただの一部でしかない。

しかしそれほど偉大な循環の刹那で、

これほど素晴らしい作品に出逢えたこと。
それこそが我々ショービズを鑑賞する者が抱く究極の夢の果てなのではないでしょうか。
そーる

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