ヒロオさん

アンテベラムのヒロオさんのレビュー・感想・評価

アンテベラム(2020年製作の映画)
3.8
黒人差別をど直球に描いている。予告編に異常に興味をそそられて観た。

メタファーが多々取り入れられている作品で、アメリカ社会を肌感覚として捉えられている人が見れば、気づく点が多かったと思う。
例えば黒人と白人の会話の中の絶妙な壁であったり、国旗をあげることの意味や、置物や絵画の意味、蝶々の宗教的な意味など…とはいえ、私にはよくわからないけど😅

黒人差別を加速させる、家父長制や男性性を描いていた点も興味深かった。
そんな社会では、白人女性も下位に置かれていた。
黒人・白人の序列の他に、男性・女性の序列も描くことで、差別構造の多層性を示していた。

構図を取ってみても、白人を黒人より高い位置に配置することで権力関係を示したりと、一つ一つのシーンへの意味づけが徹底されている印象を受けた。
演出が上手くて観飽きることはなかった。

最後はびっくりしたが、あまりすっきりしないまま終わった。
前半部分が長すぎて、掘り下げるべき点を掘り下げきれていない。
なんでこんなことが起こったのかという、物語の重要な部分の説明が不足している。

また、露骨にシンボルが詰め込まれすぎていて、観る側としては物語を純粋に楽しめなかったのもある。

『アンテベラム』というタイトルのセンスは完璧。
南北戦争以前という意味で、最後まで見るとこのタイトルのシニカルさが分かる。ミスリードでもあるね。
ヒロオさん

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