都部

老後の資金がありません!の都部のレビュー・感想・評価

老後の資金がありません!(2020年製作の映画)
1.7
第一に『老後の資金が足りない場合どうすればいいか』の答えはこの映画にはなく、月並みな家族賛歌と結局は気持ちの持ちようと言うべき物語の結末は問題を煙に巻くばかりで、ハナから答える気がないと考えるのが適切である──というのも本作で描写されるのは老後の生活資金が目減りするなか語り部の篤子が頭を抱えるコメディ的な苦悩ばかりで、実のある展開や物語とは遠い位置にあるのだ。

金銭感覚の破綻した祖母との暮らしもハートフルコメディのような体裁を取り始めるが、トホホ〜みたいなオチをまさか実写映画で見るとは思わなかったし、映画的な画作りを放棄した鼻につくテレビ的演出の数々が映画としての品質をひたすらに落としている。要所要所に挟まれるあるあるネタの連鎖に依存した話作りにも腹が立つし、かと思えば非現実的な案件に巻き込まれてコントさながらの誤魔化しに加担する馬鹿馬鹿しさ。何がしたいんだ。

この映画 全体的に老後の資金がある側の人間の思考回路というか、そういう冷笑的な視線が演出や語り口から透けて見える感じも感覚的に嫌で、ある意味 啓蒙的な着地を遂げるラストの他人事感も受け入れ難い味わいでしたね。

その割にそれらしい人生の学びみたいな台詞をべらべらと捻りもなく登場人物が口にするので、将来を考えさせられる話でしたとか老後の為の勉強の為になりましたみたいな、そういう何見てもお前は多分同じことを言うよといった雑な所感に温く甘く誘導してる感じもひどく浅ましい。あと謎のシェアハウス賛歌的な目線も分からなくて、それに語り部が人生の生き方を変えるほどに感化されたエピソードがあるわけでもないので、結末ありきの流れが目立つのも厳しかったです。
都部

都部