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フード・ラック!食運のsomaddesignのレビュー・感想・評価

フード・ラック!食運(2020年製作の映画)
3.5
ジモンの向こうに志村が見えた気がした

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下町に店を構える人気焼肉店「根岸苑」を切り盛りする安江。ひとり息子は良人は、母の手料理を食べることが毎日の楽しみだった。しかし、ある事件がきっかけで根岸苑は閉店し、成長した良人も家を飛び出してしまう。うだつがあがらないライターとして自堕落な生活を送っていた良人は、ある日、グルメ情報サイトの立ち上げを任されることに。そして、そんな良人のもとに、家を飛び出して以来、疎遠になっていた母が倒れたとの報せが入る。


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フード論者としては、食べ物映画はとりあえず見ねば!


寺門ジモン初監督作。
音読みすると「じもんじもん」になるの最近気付いた。
肉欲の映画はたくさん見てきたけど、肉を食うことそのものにここまで肉薄した映画は初めて見たかも。ヴィーガンには見せられない。

もっと教条的な「正しい焼肉の在り方」を押し付けてくるような内容かと覚悟してたら、どこまでも肉とそれを調理する人たちへのリスペクトに溢れてて良かった。「正しさ」の話じゃなくて食卓を囲む意味や、食べることのロマンについての映画だった。


ジモン監督のこれまでの人徳なのか、出演者がものっそい豪華!
芸人仲間・太田プロつながりは分かるとして大泉洋まで!ただのカフェマスターの役なのに、物語上の大事なテーマを暗示する重要な役だったり。それでいて役に自由すぎる味付けを加えてたりして、短い出演時間を存分に楽しんでる姿が目に浮かぶ。
他にも豪華出演陣の中で、竜雷太先生の好々爺っぷりが光った。大ベテランの域にあって、時折お爺さんかお婆さんか分からない瞬間があって面白かった。竜雷太が中性的になる日が来るなんて😂

ことほど左様に、演者・スタッフみんなが真摯に一生懸命映画作りを楽しんでる様が滲んでて、映画のテーマと相まってジワジワと心が温まる。なんかこう潤沢な予算や恵まれた環境でなくても、最高の仕事を志して、お客さんを楽しませたい気持ちが滲み出てくる。

ストーリーは一本調子で驚きに欠けるし、母親の病状と焼肉コラムの進捗が同列に扱われるのにも違和感がある。何より肉くってばかりの肉クエストっぷり。同じことの繰り返しで飽きてくる……かと思いきや、出てくる肉が次々美味そうなので全然飽きなかった。
カット割りが少なくて、引き画も多く長回し多用。キャラもカメラも横関係・横移動が多くてドリフのコント見てるみたい。勝手に志村のDNAを感じてしまって泣きそうになった。
編集部やバーのシーンなど、全く同じ画角・画面構成のシーンを多用してて、何か意味あるのかと思ったけど、たぶん撮影スケジュールや予算の都合。同じシチュエーションで何度も再生産する話法が志村っぽくてまた泣ける。(たまたまだろうけど)

映画そのものの出来以上に、愛と敬意に満ちた映画で見終わるとちゃんと腹が減る。焼肉が食べたくなるってだけで、この作品の目的は果たしてる気がする。

余談)
名店を嗅ぎ分ける才能(ていうか運?)の要素、必要だったのか謎。
あと竹中さん(土屋太鳳)の美味しいの演技に幅がなくて、マズイと断された肉も、至高の焼肉も同じに見えた。ホントにグルメサイトの担当任していいか不安になる。

余談2)
食べログが全面協力してるものの、映画を通して『ネットの星取りを鵜呑みにしちゃダメ』って内容でもあるので、懐の深い会社なのか出来上がりを見てないのか不思議に思った。


ジャンル映画は5点中3点満点基準として、期待を超えて面白かったのでこの評価

65本目
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