Jun

ジョゼと虎と魚たちのJunのレビュー・感想・評価

ジョゼと虎と魚たち(2020年製作の映画)
3.5
これは"ジョゼと虎と魚たち"なのか?

原作小説、実写作品にも触れたが、そのどれとも異質だ。犬童一心監督作品は役者の演技と共に印象に残るものがあったが、障がいを持ったヒロインの姿が生々しく、私は好ましく思えなかった。同監督のフィルモグラフィーを鑑みるに、フェチズムに昇華させようとする嗜好が見え隠れし、嫌悪感すら覚えたものだ。(それを中和するかの如く、くるりが手掛けた音楽にはどこか乾いた手触りを感じたことをはっきりと記憶している。主題歌の"ハイウェイ"は映画の文脈に於いても名曲だと今でも思う。)

比して新しく公開されたアニメーションはどうか。性的な要素は削ぎ取られ、ヒロインが抱える障がいは個性の一部と言って差し支えないほどライトな描写だ。こういった面を目の当たりにすると、アニメーションは虚構としてのリアルを提示することに本当に長けているなと改めて思い知らされる。

ご都合主義だろうが甘々だろうが、ふたりの恋模様は原作とも実写映画とも異なる多幸感に包まれている。それが一つのタイトルにオーバーラップしたとき不思議と腑に落ちて、妙に納得した気持ちで劇場を後にした。

これも"ジョゼと虎と魚たち"なのだ。
Jun

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