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ハニーランド 永遠の谷のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

ハニーランド 永遠の谷(2019年製作の映画)
3.5
【北マケドニアの奥地で失われる文明】
アカデミー賞前哨戦で『APOLLO 11』と並びディスカバリー映画枠で長編ドキュメンタリー賞を目指し奮闘している作品がある。それが北マケドニア映画『Honeyland』だ。北マケドニアの奥地の村の生き様を描いた本作は、批評家選出のドキュメンタリー賞で「ドキュメンタリーの最も魅力的な生きている主題(Most Compelling Living Subject of a Documentary)」賞を受賞している他、世界各国のドキュメンタリー賞を席巻している。そんな本作を観ました。


ドキュメント『夏をゆく人々』は、マケドニアの奥地の未知を描いている。石壁の中で、蜂蜜を作り、僅かな日銭を得て暮らしている村。子供達はオンボロトレーラーを住居とし、きゃっきゃ楽しそうに暮らしているが、廃墟になりつつあるのは観て明らかだ。移動民族であるこの村の住人は、死にゆく老婆、減る人口によって村の寿命が少ないことを悟る。そして子どもたちに、「お前らは一人前にならないといけない。」「荒野で生きていける覚悟はあるか?」と強い口調で現実の厳しさを教える。

本作は、伝統が消える瞬間、村が廃墟になる瞬間の微かな営みを美しい映像で捉えた作品だ。我々が知らないところで、新鮮な技術が運用され、後継者不足によって失われていく侘しさ。そして現代における移動民族の形とは何かを、ほとんど字幕なしで観察していく。

観るものは五感を働かせながら秘境に没入していき、切なさを感じていくのです。これはアカデミー賞に絡みそうですが、果たして『APOLLO11』を打倒できるのだろうか?
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