MasaichiYaguchi

ひとくずのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ひとくず(2019年製作の映画)
4.0
緊急事態宣言が解除され、周囲でもワクチン接種の話題が出るこの頃だが、コロナ禍による経済的ダメージから抜け出せない人々は多数いて、開催が近付いた東京オリンピックに浮かれているのは一部の特権階級の人だけではないかと思う。
在宅勤務や自宅待機が増え、家族と接する時間が増えて良い面と悪い面があり、特に自宅に籠ることでストレスが膨らみ、家庭内DV、特に児童虐待が急増しているのが社会問題になっている。
「劇団テンアンツ」を主宰する上西雄大さんが監督・脚本・主演を務めた本作は、児童虐待や育児放棄をテーマに人間ドラマを繰り広げていく。
母親の恋人から虐待され、母親からは育児放棄されている少女・鞠と、様々な犯罪を繰り返し、現在は空き巣を生業として金田匡郎が或る切っ掛けで出会い、自らも少年時代に酷い虐待に遭っていた金田は同じ境遇にある鞠を救うべく奔走し始める。
金田は虐待を受けていたこともあって子どもとの接し方が分からず、つい喧嘩腰のような乱暴な物言いをしたり、鞠を虐げるようなことをする者を許すことが出来ず、一線を越えるようなことも仕出かしてしまう。
しかし表現仕方が下手なだけで、その乱暴さの裏には虐げられた者への限りない優しさがある。
そして育児放棄していた鞠の母親・凛も親の愛情を知らずに育っているので、母親としての自覚やすべきこと、守るべきことが分かっていない。
この生きることに不器用な3人はギクシャクしながらも共に暮らし始め、擬似家族のようになっていく。
ところが、犯した過ちがツケとなって彼らの日々を狂わせていく。
果たして、どのような結末が待ち受けているのか?
彼らを追い込むようなハイエナのような連中もいれば、優しく手を差し伸べてくれる人もいる。
このような社会だからこそ、本作からは身を寄せ合って生きる意味が温もりと共に伝わって来ます。