グラッデン

プロミシング・ヤング・ウーマンのグラッデンのレビュー・感想・評価

4.2
TOHOシネマズ日比谷の先行上映で鑑賞。

ある女性の復讐劇であると同時にフェミニズム映画としても成立させる絶妙なバランスで設計された作品だと思う。

男性たちにある種の「罰」を与える主人公・キャシーのアプローチにはスリリングさを感じるが、痛快さは全く感じさせない。直接的な執行行為が描かれないことも影響していると思うが、彼女の行為が怒りを原動力にしていることが理解できるからだ。

彼女が抱える怒りは、作品タイトル名である「若くて前途有望な女性」だった主人公の未来は何故潰え、停滞し続けているのかにも関係してくる。鑑賞者がこうした感情を読み取れるか否かで本作に対する印象は大きく異なってくるだろう。

その意味では、アメリカにおけるMe too運動の背景を理解すると作品の見方が深まると思う。例えば、昨年日本公開された『スキャンダル』で取り上げられたFOXテレビにおけるセクハラ問題、あるいはNetflixのドキュメンタリーシリーズ『ジェフリー・エプスタイン: 権力と背徳の億万長者』で伝えられた犯罪行為しかり、アメリカにおける女性問題の多くは権力ある強者=男性側が優位に立ち、女性側の主張が事実に反して潰されてきた経緯がある。家(家長制)といった伝統的価値観を背景とする日本あるいは韓国のジェンダー問題とは別の次元にあり、また異なった難しさを感じる。

本作『プロミシング・ヤング・ウーマン』において主人公が展開される数々の行為は、現実レベルでは許されることではない。しかし、こうした背景を踏まえると、物語の中では歪みを正す行為として正当性が主張される。映画という表現だからこそ伝えられる構造性であり、これによって破滅的にも見える彼女の行動にカタルシスが生まれる。キャリー・マリガンが非常にクセのある主人公の役柄を見事に体現できていたことも大きい。

こうして書いていくと重みのある暗いのように感じさせるのであるが、作品全体としてはポップに仕上っているから物凄い。