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プロミシング・ヤング・ウーマンの1234qwerのネタバレレビュー・内容・結末

2.0

このレビューはネタバレを含みます

個人的には、テーマも主張も一ミリの余地もなく正しく、表現されるべきものだと思うものの、映画作品としてのクオリティで疑問が残って仕方のない作品だった。同じ主張でより映画として優れた作品があったら、そちらに触れたい。

以下モヤった点。

①そもそもこれを物語として「悲劇」とするか「痛快な復習劇」とするかで大きく主張が変わると思うのだが、なんとなく後者の演出を感じる部分が多く(公式の予告編では”復讐エンターテインメント”と謳われていたはず)、それにしては痛快さもないし独りよがりだしで謎…

②性犯罪を始めとしたジェンダー表現において何もかもかリアルなのに、あらゆる男性の軟弱さだけリアリティがない。
序盤の主人公のような行動を少なくとも大学中退から30手前まで繰り返していたとなると、死ぬか少なくとももう少し手酷い目に遭うのが普通だと思う。面目を潰されて逆上して手を上げる男も居なければ、主人公に車をレバーでぶっ壊してもやり返さず警察にも突き出さず悪態をついて逃げるだけ、冷やかしの言葉を投げかける男も主人公がキッと睨むだけで怯んで道を開け、事実を聞くだけで退散してくれる。わたしの知る限り「結局事実が明らかになったところで潜在的な格差が明らかになり、それすら男性は女性に対する暴力でねじ伏せることができる」というのが今あるジェンダー格差の真髄であって、先に述べたような諸々の”撃退激”自体、かなりイージーに仕上げられたご都合主義の展開に見えて仕方がなく、「いやそんな甘くないだろ」と思ってしまった。
もちろん、創作物だから別に事実と違った点があってもよいのだが、それ以外のあらゆるジェンダー差別の悲劇はリアルさを際立たせていただけに、あまり現実と向き合った作品だとは思えなかった。

③あれほどお持ち帰り男を毛嫌いしていた主人公が、結局ライアンと恋に落ちる意味がまったくわからない。大学中退以来30手前までくすぶってきた感情に対して矛盾を感じる。

④亡くなったニーナや主人公のパーソナリティ、背景がほぼ書かれておらず、感情移入する隙が無い。

⑤シンプルに、物語の起承転結の「起」に当たる部分が不明。そもそも30になるまでお持ち帰り男の処刑を続けていたのは惰性なのか?病んでいたゆえの行動なのか?それが中退後10年ほど経った今になるまで卒業生の動向も知らず結婚も知らない。主人公の執念のベクトルがよくわからない。

⑥結局映画のテーマ自体が「大きな主張」の領域を出ていないと感じた。「大きな主張」を表現するために芸術や商業作品を使うならば、もっと作品としての整合性や一貫性を高めてちゃんと仕上げて欲しい。にも拘わらず、主張はまっとうであるがために鑑賞者には「これぞ事実だ」「こうあるべきだ」と言わしめるような作り手の傲慢さがある。
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