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映画 えんとつ町のプペルのambiorixのレビュー・感想・評価

映画 えんとつ町のプペル(2020年製作の映画)
3.0
STUDIO4℃作品は『海獣の子供』以来2度目。原作の絵柄のエッセンスをうまくすくいとってアニメの画面に過不足なく落とし込む技術力はやっぱりすごい。スチーム・サイバーパンク風味の街並みは見ているだけで楽しく、ラストの星空のビジュアルも圧巻だった。
作中には、「他者に対して寛容になること」「何かをひたむきに信じること」そして「周りの空気に合わせなくたっていいんだよ」などなど、今日的かつ今の世の中だからこそ語らなきゃいけないテーマが満載。
なんだけど、語り口があまりにも前のめりすぎるというか、メッセージを伝えたい気持ちだけがとにかく先走っていて、そんなに肩筋張らんでも別によくないか?とも感じてしまい、作品が過剰に内包する熱量についていけないところは正直あった。その熱量が極点に達するのが、ひと段落目でほめたラストシーンにおける志の輔の饒舌きわまりないナレーション。オメエうるせえんだよ!こっちは感動してンだからべらべらべらべら喋って興を削いでくるんじゃあないよ…。
でもって本作のメッセージ、受け取り方を少し間違えると、「俺だけが知ってる世界の真実をバカなお前らに教えてやるよ」みたいな、傲慢かつ高踏ぶった感じに解釈できなくもなく、自己啓発セミナーだとか陰謀論だとかああいう方面に行っちゃう可能性もあるので注意が必要かもしれません。
ただね、変に穿った見方さえしなければ、話の筋自体はいい意味でベッタベタだし、きちんと泣けるところもある。全体的な完成度は決して低くないなと思いました。
あとこれ、イチャモンじみてて申し訳ないけど、「外の世界の存在を隠したいから大量の煙突で煙を焚いて空を覆ってしまおう!」って、よく考えなくてもめちゃくちゃコスパ悪くないですか?空気の汚染度合いは尋常じゃないだろうし、酸性雨とかもすげえ降ってきそうだし、あんまりいい作戦だとは思えなかった。空気を汚さずに外の世界の存在を隠す方法なんかいくらでもあったろうに。でもまあ作劇の要請上、仕方なかったのかもね。
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