サムカワ

るろうに剣心 最終章 The Beginningのサムカワのレビュー・感想・評価

4.7
ワーナー試写室にて一足お先に観させていただきました。

これにて実写版『るろうに剣心』完全に幕を下ろした…!という感慨を持つ、堂々たる大団円。

『The Final』がもちろん物語の結末を描いた作品でしたが、本作は第1作目に繋がる『ローグワン』のような位置付けで、物語の輪を閉じるのに必要だった最後のピース。

第1作目の最初の剣心のセリフ
「来たか…新しい時代が…」の重みが何十倍、何百倍にもなって響きます。


同様に2部作連続公開だった『京都大火篇』『伝説の最後篇』のような一貫性はなく、本作は『The Final』と全くの別物。

時代劇だけどウエスタンな空気を漂わせていたこれまでの剣心シリーズ、及び『The Final』は赤や黄色、オレンジといった褐色が多い画作りにアクティブなカメラワークが印象的でしたが

本作『The Beginng』は基本 青と白の多い画作りに威風堂々としたthe時代劇なカメラワーク。
殺陣もアクションよりはバイオレンス。

逆刃刀ではないがために、血の出る量は倍以上だし、腕もバッタバッタと落ちまくる。


これまで以上にお話の進む速度はゆっくりな印象ですが、それだけ剣心と巴の関係・心情の変化がたっぷりと繊細に描かれています。


そしてなにより物語のオチを知っているからこそ、それ自体がタイムリミットの役割を果たす四季の移ろいが苦しい。

青や白、もしくは闇しかなかった世界に紅葉と自然と、そして笑顔が現れた中盤、これがずっと続いてはくれぬものか…と心底思っている矢先に雪が降り始める。

日本史の中でもトップクラスに文明が音を立てて変化する「幕末の時代」という舞台立てそのものが物語る時間の不可逆性。
哀しいし、辛い。


10年前に始まったシリーズのさらにその前の時代を描くというのに佐藤健さんの変化の無さには驚きますね。

そしてやはり巴を演じる有村架純さんの物言わぬ心の叫びが悲痛で暖かくて哀しい。

シリアスな本作の中で唯一輝くのは巴のお着物。
007シリーズ級に多彩な衣装の変化を見せる巴に、作品全体を通して一抹の幸せが灯ります。
中でも光の当たり方によって色を変えるピンク色の着物が凄かった……。


剣心シリーズの肝であるアクションですが
オープニングの殺陣から圧倒されます。
剣心の圧倒的強さを見せるシチュエーション作りの巧みさから始まり、水瓶から血の水が噴き出るアイディアなど、とにかく素晴らしすぎる。

新撰組が好きなので、るろ剣のテイストで池田屋事件が見られたのもバチくそ嬉しいし、村上虹郎さんが沖田総司って「っぽい!!!」って塩梅でたまらない。


剣心vs総司なんか途中めちゃくちゃ長い長回しあったのすごかったなぁ……。


もうこれ観ちゃったら1作目の陽気な剣心の姿にすら泣いてしまいそう。

フィクションだけど、幕末がどれほど動乱の時代だったか、明治維新がどう市政の人々の目に映っていたを感じられる最高の時代劇だったなと思います。

劇場公開したらまた行くでござる。
サムカワ

サムカワ