原題である"Never Rarely Sometimes Always"
劇中、主人公オータムに投げ掛けられる4択の質問。そのシーンの緊迫感と胸を締め付けられるような静かな衝撃は忘れられない。
保守的なペンシルバニアで堕胎を決意した高校生のオータム。
両親にも打ち明けられない孤独な彼女を従姉妹で親友のスカイラーが付き添う。
ニューヨークまでの小さな冒険。
一方的に搾取される身体性を自ら取り戻す様に、独り施すピアッシング。
途切れそうな絆を手繰り寄せる様に化粧をし合う女の子たち。
おそろしく勇敢で大胆なまでに"説明"を排した演出。
比較するのも何だが同じ17歳の少女が主役の「竜とそばかすの姫」の五月蠅さとは対極だと思ってしまった。
取り上げているテーマがかけ離れている事は了解した上で敢えて言いたいけれど、どちらが17歳の女の子の共感を得られるだろうか。
徹頭徹尾、"マトモな"男が出て来ない。
これはひとりの男として自分自身も受け入れ肝に銘じなければならない事。
全体からして、おそろしく静謐な映画ながら、いやだからこそ、音楽の流れるシーンがどれも印象的。
出演もしているシャロン・ヴァン・エッテンやジュリア・ホルターの曲との確かな親和性。
オータムを演じるシドニー・フラナガンの唄声も心に残る。
"女性"の映画としてもちろん近年でも抜きん出て重要な作品。しかしそれ以上にケリー・ライカートにも通じる様な、穏やかで静かな佇まいを越えた強さと鋭利さにやられた。
エリザ・ヒットマン、またすごい才能に出会えた。
