今年デビュー50周年を迎えた異形のミュージシャン(いや、こんな言葉では括れない人)友川カズキのドキュメンタリー映画。
撮影自体は2010年夏に行われたものだが、公開が2019年だったのは監督の事情によるものらしい。
とにかく友川カズキといえば競輪と酒である。暇さえあれば各地の競輪場に通い、車券を買い、負ける。そして大抵飲んでいる。(これだけだと、フジテレビの「ザ・ノンフィクション」で取り上げられるダメな人と変わらない。)
おれが2010年頃行ったタワレコ新宿店でのインストアライブでも、友川カズキはずっと酒飲みながら歌っていた。本作とは別のドキュメンタリー映画のDVDにサインを貰った時の眼光がヤバかったのはとても強烈に覚えている。秋田訛りの緩いおじさんでいて、一瞬で人を殺しそうなヤバさがある眼だった。
競輪以外は、川崎のアパートでの緩い生活と、絵を描いているシーンがほとんどで、冒頭と終盤には演奏の場面があるが、それはあまり重要ではない気がする。ただ、ラストの、車の中での演奏を捉えていたカメラが車外に歩き出し、新宿の飲み屋街を彷徨いだすのはとても良い。
4人の息子たちのうち3人が次々と出てくるのも良い。
友川カズキは74歳になった今も変わらずあの調子で歌い、ギターを掻き鳴らし、自虐めいた独特のMCでボソボソ言いながらライブをやっている。(一昨日観てきた)
新しいアルバムも出してくれている。
この人はずっとこのままの魅力的なダメ人間なわけだが、「ダメ」なのは現代日本社会の尺度で測っているからであって、むしろ逆に「こんな生き方はお前らできねえだろ?」という崇高さも放っているのだ。無頼とはそういうこと。
それへの憧れのようなものを感じるため、おれはこれまでも、これからも、友川カズキを聴き続ける。
「生きてるって言ってみろ!生きてるって言ってみろ!」