千年女優

生きちゃったの千年女優のレビュー・感想・評価

生きちゃった(2020年製作の映画)
4.0
寡黙で本心をあまり打ち明けない男性で、学生時代からの幼馴染の奈津美と結婚して一児を設け、もう一人の幼馴染の武田と事業の立ち上げを検討する山田厚久。ある日会社を早退して帰宅したところで奈津美の不倫を目撃してしまった彼が、それでも本音を口に出せずにいるとあれよあれよと思わぬ事態に直面する様を描いたドラマ映画です。

日本アカデミー賞監督の石井裕也が原点回帰をコンセプトにした上海国際映画祭で発表のプロジェクト「B2B A Love Supreme」の一環として制作した作品で、長編映画デビュー作にもちなんだ「剥き出し」の物語を仲野太賀と若葉竜也に大島優子の三人を配して描き、翌年公開される『茜色に焼かれる』『アジアの天使』へと繋げていきました。

日陰の人の奮闘を詰込式で描く石井流をさらに加速させていて、ほとんど「理不尽」とも言える作劇で登場人物を追い込んで感情の爆発を引き出します。剥き出しにされた「生きちゃった」は自己実現ひいては自己超越の現代においては想像以上に深刻で、次作『茜色…』における「それでも生きる」と共鳴してなお一層重みを感じる一作です。
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