国内の映画賞を席巻し、サンダンスの観客賞と国外でも高く評価されたデンマークの作品。
弁護士であるアンネは夫の前妻の子であるグスタフを家に迎え入れるが徐々に二人は禁断の関係へ…という話なのだが、撮影やカメラワーク、演出が計算しつくされておりとても美しい。
深田晃司監督『よこがお』を連想した部分も多かった。中年女性が主人公ということや、美しく奇妙な撮影や演出ということが共通していると思う。そしてその残酷さも。
アンネは明らかにエネルギーを持て余している。夫とセックスはしているし仕事も順調、足りないものはないはずなのにエネルギーが有り余っているという描写の積み重ねがとても丁寧。だからこそ後の展開への説得力が増す。
人間というものの勝手さ、残酷さというものに加えて、終わりのある愛を受け入れて生きていくことが人生であるのだとも示すような作品だと思う。
スサンネ・ビアやトマス・ヴィンターベア作品にも出演しているアンネ役のドリーネ・ディアホルムさんが本当に素晴らしいし、グスタフを演じたグスタフ・リンドさんも対照的な存在感でありながら、静かな狂気を抱えたという共通した資質を上手く表現していた。
美しく残酷な寓話的物語で素晴らしかった。