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三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実の93n35i5のレビュー・感想・評価

4.5
作家としての三島由紀夫と彼の作品の愛好者だが、本ドキュメンタリーはアーティストとしての三島由紀夫を好きになるものであった。
映像、フルで観たい。
このレビューでは学生運動自体の是非については一旦置いておく。左翼と右翼、どちらが優れた思想や言動かという部分に関しても比較するのは無意味な事であろうし、そもそも私にはその答えを出せない。わかる事は、思想や向かう先が異なり暴力を良しとする両者が同じ空間を共にし、"言葉"を用いて平和的意思疎通を図ったという偉業、そしてそれは文筆家である三島ありきだからこそなし得たのだという事。映像でも言及していたが、結局のところ右翼左翼と言いつつも"堕落した日本"という共通の敵に対する異なるアプローチであった訳で、根底に燃ゆる改革への熱き情熱と闘争心を讃えあう様は美しかった。
昨今には見る事の無い若者達・漢達の魂からの咆哮をしかと感じた。

また三島に関して、彼は天皇派の天皇礼賛という印象だが決してそうでは無い。若き頃に感じた偶像的天皇の幻想に取り憑かれ、現実の天皇のその理想との乖離に人一倍絶望と嫌悪を感じ人一倍完璧なる天皇を求めていた。
芥君も指摘していたが、結局三島は幻想の世界でしか生きられなかったし美を見出せなかったのだ。三島の政治活動というのは良くも悪くも自己の理想郷という美を作る事だったのだと思う。単純に変革を望む左翼との違いはそこで、三島は右翼云々以前に美意識の追求。だから美は開かないと悟り幕を下ろした。彼の作品にも見られるように退廃を恐れながらも退廃に惹かれる性癖上、もう人生という文学は、自身の死をもってしか完結しなかったのだろうなと。
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