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耳をすませばのmatchypotterのレビュー・感想・評価

耳をすませば(2022年製作の映画)
3.7
4連続邦画、偶然だけどまぁまぁ珍しい。

この3日間ぐらい、久し振りに仕事に飲み込まれ、映画観れなかった。だからやや疲れてても、半ばこの“コンクリートロード”からの救いを求めて2人の“奇跡”と“夢”の続きを観に行くぞ、と。

思いのほか評価低いのが気になってたが。
そりゃ、あの『耳をすませば』だから。
ベースの期待値が高過ぎるところから始まるのもわかる。無理もない。
個人的にもジブリの好きな作品No.1だし。

しかしながら、あの後日談を、このキャストで、“あの時のこと”を織り交ぜながら、、、これはこれで良いんじゃないか。

天沢聖司が松坂桃李で、月島雫が清野菜名。
杉村が山田裕貴で、原田が内田理央。良いんじゃないか。

山田裕貴、やっぱり素敵。
あの杉村がこんな成長を遂げて、何となくあの時の声のデカさとKY気質を引っ提げながら、めちゃくちゃ核心ついた、でも優しさと前向き全開のこっぱずかしさ混じりの粋なセリフ、、、良いね。似合う。
よく研究されてた。山田裕貴らしい。

他にも、あの校庭のベンチのシーンとか、神社の境内のシーンとか、電車のムーン、そもそも雫が着てる服の感じとか、胸躍る、躍らざるを得ない。

「やなやつ、やなやつ、やなやつ」

話の流れが完全なる“あの時の後日談”ではなく、“あの時”を描きながら、そこからの10年を経た“今”を写す。

“あの時”があって、“あれから10年”があって、“今”に至り、“この先”を見ていく、と言うスタンスが良かったと思う。

だからあえて“あの時”のシーンばかりを描いて“あの『耳をすませば』”の真似事に終わらず、しっかりとやや極端なそれぞれの現実を差し込む。

そもそも青春や、あの時の青臭くて甘酸っぱくて淡い恋心自体がファンタジーで、チェロ奏者になるだの、物語を書くだの、当時息巻いて目指した“夢”なんて、そうそう言えば叶うものでもない。

それは、彼と彼女の2人だけに当てはまるものでもなく、全ての人にそれは言える。だから、大抵の人は、結局大抵の人が歩んできた道に寄っていく。

しかし、時折、その中にそれを貫き通せる人もいる。
それが良いか悪いかの話ではなく、初めから“それ”に出会えている喜びと苦悩がそこにある。

10年の遠距離恋愛。大抵の人から見ればそんなことはまずあり得ない。しかし、この2人にとってはそれは別にあり得なくない。

その「この2人ならあり得る」が、“あの時”のことでこっちもわかってるし、“今”も杉村と原田が近くでそれをわかってる。

ある意味、予定調和な物語なのかも知れないが、こんな予定調和は大抵の人からすれば“あり得ない予定調和”、予定調和になるわけない。

その“奇跡”がここにある。
アニメの方でも“あの時”を何度も何度も観て、“赤い糸”と言うものが本当にあるんだと思えた。

そして、“今”も、そう思わせてくれた。
それで良いじゃないか。素敵じゃないか。

おっさんが1人で観に行ってそう思えたんだから良いじゃないか。

隣に座った異国のお姉さん方2人が、異国語でペラペラおしゃべりしてうるさいし、スマホをガンガン見るし、しまいには居眠りして寝息も聞こえるし、めちゃイライラしたけど、それでも素敵な“奇跡”だと思えたんだから良いじゃないか。

お姉さんたちのやってること全て、映画館の中でやるメリットを感じないことばかりで外に出た方がもっと思い切りやれますよと思いつつ、この“奇跡”を“奇跡”とも思ってないだろうことに、むしろ優越感さえ湧く。

こんな“奇跡”、そうない。
しかし、この2人だからこそ、“奇跡”ではなく、掴める夢と育める愛がある。

見た目よりもそれぞれのキャラの中身や言い回し、雰囲気が割と『耳をすませば』っぽくて、何かこっちも脳内で勝手に色々思い出せた。

「ウブだなぁ〜」とか「普通はそんなことやったり、言わないっしょ」って思えたことがある意味、『耳をすませば』だと思う。

雫が勤める出版社の面々もやたらと極端なキャラでそれっぽいんじゃないかな。
あの新米の後輩、クソ良いヤツ。世の中あんな良いヤツいるのか、世の中捨てたもんじゃない。あんな部下が欲しい。

評点が低いのはたぶん、、、そう。
予告編観た時から思ってたけど、やっぱり『翼をください』ではなく『カントリーロード』が良い。そして、あのオカリナ吹きのおじいさん欲しい。

『キングスマン』と『耳すま』は『カントリーロード』に尽きる。


F:1879
M:1819
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