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マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”のとぽとぽのレビュー・感想・評価

3.5
"パリのファッションデザイナー"になる!その夢を叶えたその先…決して忘れられない偉大な存在に

新たな女性像と共に当時の空気感を反映したカウンターカルチャーを生み出した、それはまるで新たな言語のよう。当時の主流である黒からの白、タグからの解放、そして、あり物を活かすなど立ち返るような先進的で画期的な服作り。凝り固まらずに確固としたスタイル="マルジェラ・スタイル"の持ち主が、決して公に顔を出さない理由。あるいは、ジャン=ポール・ゴルチエの影響から、"アントワープの6人"。古着から服の破壊と再構築による"破壊のモード"、考察による脱構築・再構築。発想の転換による面白い試みの数々。メンズのコレクションはワードローブ。
そうした発明は相次ぐコピーで模倣される。神(エルメス)のもとに悪魔"ベルギーの反逆児"が?「色はいらない」というヨウジヤマモトみたいなこと言っていた。その結果、周囲・世間からの"はぁ?!"という反感・苛立ち。ファッションシステムに取り込まれて、ありきたりな言葉に置き換えられていく…。本当にしたいこととできることの乖離に苦しんでいく、サプライズがなくなることへの悲しい気持ち。一種、魔法が解けていくような感覚だろうか、クリエイティブなものづくりの現場ならではのスリリングな過程が失われる。アシスタントに指示を出すアーティスティック・ディレクターでなくファッショデザイナー。
真に画期的な真の創造者はあらゆるシステムに取り込まれることなく、自分を追い込んだものづくりへの姿勢だとしても傍から見れば何処か飄々と捉えどころの無い印象のまま自由気ままに気兼ねなく何かを表現し続けていく。ブレない自分を持っていたら、何でもできる。
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