QI

ミナリのQIのレビュー・感想・評価

ミナリ(2020年製作の映画)
4.2
“過去・現在・未来”

オープニングのA24とPLAN Bの文字に期待が高まる⤴️

そしてその期待にしっかりと応えてくれた良き作品でした。

韓国移民として農場経営を夢見る夫のジェイコブ、そんな夫の夢に不安を感じ家族のための安定した暮らしを望む妻のモニカ、二人の諍いに心を痛めながらも常に家族のことを考えている姉のアン、そして持病を抱えつつも新しい生活に期待高まる弟のデビット。

モニカは生活への不安から祖母のスンジャを呼び寄せるのですが、この祖母の登場からまるで自分の家族や親戚を見守るような気持ちになり、物語にグイグイ引き込まれていきました。

父は息子に自分の成功する姿を見せ、夢を持つことの大切さを伝えたい。

母は子どもたちへどれだけ愛情を注いでいるかを伝えたい。

祖母は孫に生きていく考え方を伝えたい。

姉は母親の現実的な考え方を理解し、その助けになりたいと考え、弟はそれらを素直に受け止める。

そんな想いや家族の関係性が、地面に強く根を張り生き続ける“ミナリ(芹)”のように次の世代に引き継がれていく。

この作品で描かれる家族の営みと絆は、人間にとって普遍的なもので、誰もが共感できることなのではないでしょうか。

そしてこの物語の背景にあるのが、フロンティアスピリットとアメリカンドリームという極めてアメリカ的なもの。

かつては白人にしか与えられていなかったという過去の歴史が、その後のアメリカに多くの問題を生み出してきました。

アジア人に対するヘイトクライムはコロナ禍の影響もあり、その深刻さを増しています。

そんな中、この作品では地域のコミュニティも移民家族を寛大に受け入れ、家族も次第にコミュニティの考え方に馴染んでいくという、これからのアメリカ社会が目指さなければならない姿を描いていることが、この作品が高く評価されている理由だと思いました。

そして最後の事件の際にデビットがとった行動。

過去が未来に繋がった瞬間に涙が止まりません。

さらにエンドロールの最後のメッセージでいつまでもその余韻に浸ることに…

“アカデミー賞最有力!”というような言葉に惑わされず、素直に向き合うことで感動が伝わる作品だと思います。

p.s.
とても多くの賞を受賞しているのでちょっと調べてみると…
そのほとんどがアメリカ国内の賞。
やっぱりそうかw
QI

QI