まーしー

MINAMATAーミナマターのまーしーのレビュー・感想・評価

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
4.5
胸が締め付けられるような作品だった。

主人公は実在した写真家ユージン・スミス。日本の「公害の原点」とも言うべき水俣病の被害者を、苦悩と挫折を味わいながら撮影する姿が描かれている。

その写真家ユージンを演じたのはジョニー・デップ。最近は私生活ばかりが注目されがちだが、私は大好きな俳優の1人。
奇抜なファッションなど特徴ある人物を演じることの多い彼が、本作ではシリアスな役どころを嫌味なく、しかし印象深く演じていた。

また、外国人の写真家が地域に受け入れられていく過程にも感動した。
日本は島国のため、外国人との接点も少ない。熊本の人がユージンに心を開かないのも当然の反応だろう。
しかし、ユージンの人柄もあり、地域の人は少しずつ心を開いていく。
水俣病の子どもを母親が入浴させている写真『入浴する智子と母』が誕生したのは、ユージンと彼の将来の妻アイリーンの人間性によるところが大きいと思う。

エンドロールで流れた世界の環境汚染の写真。水俣病と同じような事態が他の地域でも多く起こっている。日本の福島第一原発事故も紹介されている。
利便性の向上や営利の追求に果たして死角はないのか――いま流行りのSDG’sが注目される背景にも繋がる問いかも知れない。

以上のようにテーマ・内容は重たいものの、少しでも多くの方にご覧いただきたい作品。そして、水俣病をはじめとした公害・環境汚染で苦しんだ人々、今なお苦しむ人々を少しでも知っていただきたいと思った。