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MINAMATAーミナマターの010101010101010のレビュー・感想・評価

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
3.0
こりゃ「水俣」の映画ではなく、「ユージン・スミス」の映画。タイトル詐欺。
どこまで誠実に「水俣」を描こうとしたのか、というところが、大いに疑問。
フィクションなのだから多少の「史実のねじ曲げ・捏造」があるのは仕方ないとしても、都合よすぎる気がする。
水俣で実際にあったいろんな人たちの努力や闘いがなきこととされ、ユージン・スミスの手柄になってる部分もあったり、患者さんたちの描き方も、これぞ「感動ポルノ」という感じで、観る側の感情に訴える気満々。
絵に描いたような勧善懲悪の図式も、いやいやいや、そんな単純なことにしちゃいけないんだってことこそ、水俣の患者さんや闘争に関わった人らが現代の我々に問いかけてくれているんだと感じているところもあり、残念。

完全なるフィクションとして見れば、評価は「4.0」くらいにはなっていたと思う。
総会での交渉のクライマックスにおける加瀬亮の切実さはいまだに瞼の裏にチラついているし、放火で焼けたと思ったフィルムが出てきたシーンにも感じるところはあった。
されど、それらは「作品」をより激しく観客に訴えかけるものにするため仮構された(付け加えられた)ものである。
製作陣は、「事実」を描くだけでは「弱い」と感じたのだろうか。
もしそうだとすると、製作陣たちは一体、水俣の何を見て、そこから何を学んだのだろう。
この映画の制作陣が、水俣の闘争そのものの凄まじさ、その本質を如何に見失い、ただの凡庸な社会派エンタメの枠に当て嵌めることに力を注いでしまったのか、ということが、分かってしまう。
あらかじめの、ありきたりな図式に「ミナマタ」を当て嵌めただけだよ。

ちゃんと水俣と向き合っていないのだよ。
実際にあったことだけを並べるだけで十二分に衝撃的であると同時に人々に切実に訴えかけるものがある、ということは、土本典昭の映画を見るだけでもひしひしと感じられる。
とにかく、誠実さが感じられないところが随所に見られた気がしました。