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弱虫ペダルの特売小説のレビュー・感想・評価

弱虫ペダル(2020年製作の映画)
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仲間と一緒に、希望をつなぐ、ここが居場所、みたいなモノローグ後にいわゆる落涙を伴う類いの感動を誘う劇伴が流れ、映像はスローモーションに、そうして踏ん張りだか火事場の糞力だかが発動し、その結果が出る瞬間は劇伴及び自然音なんかも消えて無音状態に。

という演出が二時間弱のランタイムの間に体感で七万回くらい繰り返される、即ち感動だかメッセージだかの大安売り状態になっておりまして。

そもの自転車レース自体がチームスポーツならばそこに集約するのも必然かも分からんけれども、現状、それを免罪符に各キャラクターの背景や関係性を云うエピソードを重ねて物語を描く事、及びそこに演出を加える事を放棄しているように感じちゃったんですよ。

都合三度のレースシーンがあって。

その二度目に、主人公が素人が故に知る筈もなく、そしてそれを使わない限り勝ち目はない技術を、実は教わっていたという展開になる訳ですけれどもいやいや、教わるタイミングなんか絶対になかったし、教わっていたとしてその直接描写は省略した方が作劇上効果的としても匂わせ、仄めかしはしとかなきゃ駄目なんじゃないかと思いますよ。

更に三度目では、よりドラマチックな逆転劇の為に主人公がチームに大きく遅れをとる訳ですけれども、その理由の描き方が滅茶苦茶に不自然、劇中の誰も言及しようとせずそうしたルールでもあるかのように錯覚させられる。

詰まりやっぱり、ずっと独りぼっちだった少年×チームスポーツ=感動、という観客を中身空っぽの馬鹿と決め付けた舐めた態度から出る皮算用を延々と見せられる訳ですよ。

或いは。

ずっと独りぼっちだったから仲間と一緒にレースが出来て尚且つ自分にも役割がある事が嬉しい、的な事を言いながらペダルを踏む主人公の表情が常に狂気染みて描かれておりましたからして。

もしかしたら寂しさの余り精神に異常を来した誰かの妄想を、俺は見せられていたのかも分かりませんね。

という本編に対する感想とは別に。

橋本環奈ってえっらい美人なんだなと、本作で初めてそう思いましたあたし。
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