Torichock

あの頃。のTorichockのレビュー・感想・評価

あの頃。(2021年製作の映画)
3.2
「あの頃。」

【今が光でも明日が闇ならば
僕はどちらの日々も捨てるさ
それでも涙が乾かないのなら
君と僕の ずっとキレイなものずっとキタナイもの
光と影の涙流すのさ】

大抵の人間が持っているであろう「あの頃。」にあるきらめきや焦燥は、きっと人生の中で振り返れば、ドブネズミみたいに美しいのかな?
それがどんなに品がなくて、どうしようもなくても。

何かを真剣に追いかけている時。
何かを追い求めてる時。
そして、それを共感できる仲間がいる時。

まるで、バンド映画見ているかのように感じていた。彼らが真剣に追いかけ、追い求め、突き進むその姿は。ただ違ったのは、それが自分たちの音楽ではなくて、アイドルだっただけ。

・・・と思って調べてたら、あの人たち「赤犬」のメンバーさんじゃねぇか!
「赤犬」と言えば「味園ユニバース」で、「味園ユニバース」は山下監督。
確か、今泉監督って山下さんのアシスタントだったっけ?繋がっててびっくり。

個人的には、僕はこの作品山下監督にとって欲しかった。なんとも言えないモラトリアムな感じの匂いをもっと感じたかった。
なんというか東京に行く前と行ったあとのつながりが、なんかあっさり?バッサリ?というか味気なくて、そこでなんだか少し冷めてしまった。
変わりはじめた人と変われない人の温度がゆったりと変化していくような感じを、もっと感じたかったような。

あとこれは完全に好みの話だけど、後半の彼ら内のいざこざ含めて笑いにするという姿勢は好きなのだけど、あのバラエティのノリを笑えるかと言われたら、僕はそう思えなかった。まぁそれはもちろん、僕がその輪の中にいない蚊帳の外だからなんだろうけどね。
実は今泉監督に少し感じてはいたんだけど、「野郎の願望」をちょっと感じちゃって。
「愛がなんだ」もそうだけど、僕はあんまりそれが好みではなくて。何かを好きって事で突き抜けるのはすごい事だけど、だからって何をしても面白いなんてないしね。
あそこにノレないってことは、向いてないのかな?とか。
いや、でも死さえもネタにするのは最高なのだけど。

「今が一番楽しい」それをとても大切にしている映画だからこそ、どんな時でもそこそこ生きていて、違うことしながらそこそこ人生やってるっていう感覚を提示してくれたラストは、すごく素敵だった。
主人公ブレブレとか言ってる人もいたりするけど、人間そんな芯持って生きてるわけじゃないし、なんとなく選んだもの・誰かに雑に渡されたものが、人生を大きく左右するなんてことは、ざらにあるもの。
人間は流れ着く生き物なのかな?と。
その流れには逆らうことはできないってことだし。
橋の上、川かなんかはよくわからないけど、そこで話すことってすごく重要だと感じた。
水は必ずどこかに繋がっていて、どこかに流れ着くわけだから。

どこかオタクという存在が少し遠く感じる部分もあったりとか、自分の心情の変化とかもあって不思議な感覚になった。
僕は今、どこの川を流れながら、何を観ているんだろう?
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