人を笑わせる為に始めた生業が怪奇譚を話して軌道に乗る、その皮肉な状況に対する葛藤があったならばその部分を掘り下げて欲しかった、と思わされるくらいに。
崖っぷち芸人の青春グラフィティとして、或いはお化けがでる方の「劇場」という具合にしっかり筋の通った納得のいく物語が先ず軸として描かれてあって。
答え合わせ、或いは辻褄合わせを都度きちんとしてみせる、即ち各エピソードを実話怪談としてしっかり成立させる誠実さもあって、更にそれを談話で済ませず物語の流れ上に自然な形で組み込みつつ、同時に強めの描写で絵面としても描く、詰まりが映画的手法で見せるサービス精神にも溢れてて。
とある小道具も然る事ながら、配役時点で勝利確定のとある人物を活かした伏線回収も鮮やか、すっかり驚かせてもらいましたし。
主人公のお相手役の女優さんの、恐怖に対するリアクションもこれ雰囲気を盛り上げるに一役も二役も買うくらい巧くって、ホラー映画ならではのわくわく感を存分に味わわせてくれましたし。
いやほんとに。
特殊状況下に展開する青春映画、或いはモラトリアム卒業ものとしてすっかり楽しませていただきました、と。