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ふたつの部屋、ふたりの暮らしのronのレビュー・感想・評価

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辛すぎてエンドロールを呆然と眺めながらめちゃめちゃに泣いたんだけど、わたしがこんなに泣いてていいのかなとも考えさせられる映画だった。(ラストにかけてのシークエンス個人的にかなり好きだった)サスペンスっぽい演出だと言われてるのを何回か見たけれど、彼女たちの世界でレズビアンであることはきっと毎日がこんなふうに不安と隣り合わせだったんだろうなと思う、し、それを言葉じゃなく肌で感じさせてくれる。それでも朝一緒に起きて髪に顔を埋める瞬間の画はあたたかさそのもので、だからこそ映画の後半で必要最低限のものしか揃えられてない部屋でひとり座りこむニナの姿が悲しい(それまでの生活がひしひしと伝わる部屋の美術大好き…)

あと、映画を観た直後は子供のほうにも共感していて、お互いの切実がぶつかり合うのがいっちばん辛いよねとか思ってたけど、なんかだんだんそうやって考えられることそれ自体がマジョリティの立場からの物言いなのかもと思えてきた、だってマドもひとりの人間として尊重されるべきだし…。自分のスーツケースにとにかく服を詰め込んだり、看護師に隠れてニナに電話をかけたりと、長年の虐待によって自分の意志を他者に伝えることが難しくなっていたのであろうマドの狂おしいほどの意志が不自由な身体を通して不器用に発散される箇所がくるしい。同性婚が認められているフランスでさえ片方が言葉を失った途端に彼らの関係性は誰にも証明できなくなるんだなとヒリヒリ感じた、し、自分のことを棚に上げ家族に尽くしてきてもなお一途に夫を愛することを当然のように求められる母という役割を改めて突きつけられたなあ。
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