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モロッコ、彼女たちの朝のjamのネタバレレビュー・内容・結末

モロッコ、彼女たちの朝(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

それでも、朝は来る

女性の身体の中心、子宮で
十月十日 小さな命は育まれる
日々少しずつの変化を受け止めて
こころも支度を整え
そうして、母になる
それは本来ならば、
周りの全てから祝福される奇蹟なのに

はち切れそうなお腹を抱えたサミアの
暗く翳った眼差しは
生まれ来る赤ん坊が"罪の子"とされる
イスラムのタブー、未婚の母故のものか

柔らかく清潔な寝床も
母子が生きる術となる美容師の仕事も失った彼女を
成り行きから住まわせることになるアブラ

夫を亡くし、女手ひとつで娘を育てる彼女の固く閉ざした扉を開いたのは
サミアの作る祖母直伝のルジザと、
二人を繋いだ娘のワルダの笑顔
それから、美しい歌詞のあの曲

アイラインをひき
装う悦びを取り戻したアブラは
産んだ翌朝、養子に出して"無かったことにする"というサミアを諭すけれど


昨年から産科で働くようになり、
毎日たくさんの妊産婦さんをみて
自分とは無縁だと思っていた"妊娠、出産、育児"について考えることが増えた
そんな時に、導かれるようにこのモロッコ映画を観た


我が子を産み、流すサミアの涙の意味
妊娠が分かった時の彼女を想う
頑なに赤ん坊を見ようともせずにいた
そんな彼女が初乳を与えると
断ち切れない母子の絆を感じ


養子に出すから、と付けようとしなかった名前を"Adam"にすると決めたのに


朝になるまで待とう
朝になれば

そして、朝は来る
jam

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