どらどら

モロッコ、彼女たちの朝のどらどらのレビュー・感想・評価

モロッコ、彼女たちの朝(2019年製作の映画)
4.5
- 死を悲しむ権利もない
- 女の権利は限られている

喪失を悲しむ権利をも奪われ、峻厳に、それも峻厳すぎるほどにしか生きられなかった
「未婚」であるという、たったその一点だけで、この世界では心を閉ざさねば生きられなかった
社会の偏見と抑圧のもと、人生から阻害されたふたりの邂逅と連帯

しかしその穏やかで豊かで尊い時間は必然的に終わりを迎える
「生まれてくる子に罪はない」とサミアは繰り返す
彼女の「事情」というものは詳細には明かされない
それでも僕は画面を飛び越え、その奥で震えるサミアに伝えたかった
あなたにも罪はない、と
罪があるとすればそれはあなたではなく私だ、と

この連帯の先に、「自由に飛べる」社会を作ることは、彼女たちの物語を知った私たちの義務でもある
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モロッコ社会での未婚の母をテーマに描き出すシスターフッドムービー
劇伴らしい劇伴もなく、ひたすらに街の喧騒の中息づく彼女たちの生活の音がとても心地よくて美しく、そして涙が出るほど尊かった
そしてそれを奪う「圧力」、画面には映り込まないことで逆説的にその力を誇示し続ける「圧力」に怒りと憎しみを覚える
この映画の美しさのみにナイーブに感動することはできない
「その連帯がなぜ美しいのか」という問い、「その連帯が求められることの不条理さへの怒り」をもこの映画は捉えているように感じた
ラスト、サミアの涙と決断の意味を考え続ける必要がある

それにしてもワルダかわいすぎる

ホームページの山内マリコさんのコメントが素晴らしかったので引用

「行き場のない妊婦と彼女を受け入れるシングルマザー。連帯する女と女(とその娘)の物語に、こう問いかけられた。あなたにはこれができる? ジェンダーギャップ指数144位の国モロッコから届いた映画に、120位の日本の、ひっそり産み棄て罪に問われる女性たちが重なる。まったく他人事ではない。」
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