ボブおじさん

モロッコ、彼女たちの朝のボブおじさんのレビュー・感想・評価

モロッコ、彼女たちの朝(2019年製作の映画)
3.8
サッカーワールドカップ2022もいよいよ佳境に入った。そんな中で予想外の躍進を遂げアフリカ勢初のベスト4入りを果たしたのがモロッコ。今回はまさかのベスト4入りを記念して、日ごろ紹介されることの少ないモロッコの映画を。

〝モロッコ〟で映画とくれば真っ先に思い浮かぶのは「カサブランカ」、更に遡ればその名もズバリ「モロッコ」という古典的名画もある。だが、いずれも舞台はモロッコではあるがアメリカの映画だ。モロッコ制作の映画が思い浮かばないのも無理はない、何せ2021年公開のこの映画が日本で劇場公開された初めてのモロッコの長編映画だったからだ。

イスラム文化の影響で家父長制が根強いモロッコにおいて、同国の女性監督マリヤム・トゥザニが、未婚の母というタブー視される存在をあえて題材に選んで本作で長編デビュー。

臨月を迎えた大きなおなかを抱えながら、職も住居も失い、路上で生きるサミア。しかし、イスラム社会では未婚の母はタブー視され、彼女を雇おうとする人はなかなか見つからない。そんなサミアを家に招き入れたのは、パン屋を営むアブラだった。彼女は夫の死後、幼い娘との生活を守るために、心を閉ざして生きてきた。パン作りが上手でおしゃれなサミアとの出会いで、色づき始めた孤独な親子の生活。やがて、町がお祭りの興奮に包まれるなか、サミアの陣痛が始まる。

男性中心の社会で女性たちが直面するさまざまな問題を、繊細かつ温かい視線で見守る作風は国や文化を越えて、見る者に伝わってくる。また、日本では見かけないパンやエキゾチックな文化・風習も興味深い。

決して恵まれた環境にあるとは言えない彼女たちだが、お互いの孤独に寄り添いながら絆を深め合っていく。最後に彼女たちが選んだ道とは…

今なら動画配信などでも視聴可能なこの映画、ご興味ある方は是非ご覧ください。