けーはち

息子の面影のけーはちのレビュー・感想・評価

息子の面影(2020年製作の映画)
3.5
アメリカへ出稼ぎに向かい消息不明になった息子を探す、初老の母親のロードムービー。前半はひたすら移動、聞き込み展開。主人公の移動中、背中を収めるカットが多くドキュメンタリー風の肉迫感がある。話は淡々と地味だが時折趣向の変わった画で語ってくれて飽きはこない。途中、アメリカ国境から母親の元に帰る青年が鏡写しの副主人公として登場、二人が合流。当然何も起きない訳もなく……理解できない部族の言葉とともに焚火の炎に浮かぶ悪魔の影。その正体や目的はあえて説明されない(反社会的な武装勢力だが、もっと象徴的な悪魔の姿もある)。悪魔は人を試し、堕落か死かを為させる。イエス・キリストだって銃火器を突き付けられたら悪魔に膝を屈する(かな?)。我が子を探す母親の情念の炎が静かな絶望にすげ変わる瞬間。美しい自然も時折あるが、荒野は広がり闇は深い、どんよりとした不安と恐怖を描くメキシコの重苦しい物語。