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アンティークの祝祭のakrutmのレビュー・感想・評価

アンティークの祝祭(2019年製作の映画)
3.4
認知症のために記憶や思考がおぼろげになり「今日が人生最後の日」だと確信する老女クレールと、20年ぶりに帰省した娘マリーの現在と過去を描いた、リンダ・ラトリッジの小説「Faith Bass Darling’s Last Garage Sale」を原作とする、ジュリー・ベルトゥチェリ監督によるドラマ映画。田舎町に住む老女クレールは、家の中にあるすべてのものを庭に出してガレージセールで処分しようとするが、娘マリーの友人がそのことを知って、パリにいるマリーに連絡をして帰省させる。久しぶりに見た母親の様子にマリーは愕然とするとともに、処分しようとしている様々なアンティーク品を見るうちに、母親や家族にまつわる悲しい記憶を蘇らせていく。

おそらく小説では、処分しようとしている品々と過去の記憶を結びつけて、過去の母娘の関係や家族に起こった出来事を情緒的に描いているのだろうが、残念ながら、それを上手く映像化できなかったというのが正直な感想である。映像でも表面上はそうなっているが、そこにクレールやマリーの(複雑だと思われる)感情が乗っていないので、過去の出来事を淡々と追っているだけであり、出来事自体は悲しいのだけれど、だから何?としか言いようがない。また、クレールを通じて、人生が終焉に近づいているときに走馬灯のように今までの人生が蘇るというようなことも描きたかったのだろうが、これも上手く行っていない。演出の失敗なのであろう。最後の結末も唐突で驚くばかりである。一気にここでお金使ったな、という感じである。(実際にはCGだろうけど。)

カトリーヌ・ドヌーヴとキアラ・マストロヤンニという実の親子の共演なのに、このレベルの映画なのはとても残念である。そもそも最近のカトリーヌ・ドヌーヴは、『真実』でもそうだったが、室内セットでの撮影しかできなくなっているようである。つい最近までは、屋外ロケでどんどん撮影していただけに、それ自体は映画の出来とは関係ないとはいえ、この衰え方はやっぱり悲しい。それでも絶えず煙草を吸っている粋な姿はさすがであるし、肌がまだまだ若々しいのも凄い。一方のキアラ・マストロヤンニも大した演技をしていなくて、本当に母が心配なので、共演しつつ様子を見ていたという感じに見えてしまう。マリーの小さい頃を演じた子役がちゃんとほくろを付けていたのには微笑してしまったが。
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