Yuri

MOTHER マザーのYuriのネタバレレビュー・内容・結末

MOTHER マザー(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

「(秋子が)いないとどうしていいかわからない」ではなく、「お母さんのことが好きだ」と周平は言った。この言葉がこの事件の切ない真実なのだと思う。だって周平は「ずっとダメだと知っていた」のだから。秋子は自分の身を堕とすのではなく、傍にいる存在を堕とす、たとえそれが大切な人でさえ誰彼問わず寄りかかれると思ったら寄りかかる恋愛依存なのだと思う。そうすることでしか生きていけないと思い込んでいる人間は世の中に一定数いるし、そういう人を知っている。本作では長澤まさみが演じているから美人だけど、世の男性は顔が良くなくてもスタイルが良くなくても、一瞬の気の迷いで女性を抱いてしまうし、してしまったら最後、情が湧いてしまう生き物なのだと思う。周平の小さな世界の法律は秋子そのもので、その法律はいつも間違った答えしか示してはくれない。おかしい、ダメだと思っても、法律だから従うしか道はないのだ。それでも、逮捕されることで、秋子と引き離され、周平は共依存から抜け出せるかも知れない。けれど、秋子は一生抜けられないと思う。抜け出すことを拒絶しているし、ロックオンできる可能性が高い周平を手放すわけがないから。周平が共依存から抜け出せたとしても、秋子が抜け出せなかった場合、周平の心はきっとずっと苦しい。それが虐待された子の典型的な特徴であり、典型的なのに抜け出し、完治する方法はいまだないからだ。周平役を演じた奥平大兼(おくだいらだいけん)と郡司翔がとても上手くて驚いた。是枝監督に演出されているのかと思った(爆)長澤まさみも素晴らしくて、作品をリードし質を上げていたし、「キングダム」じゃなくて本作で日本アカデミー賞を獲るべきだったと思った(爆)
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