ドリームアライアンス(夢の同盟)と名付けられた、まさにその名の通り共同の馬主による競走馬が、ウェルシュナショナルというウェールズ伝統の競馬に勝利するまでの紆余曲折を描いた。
ジャンが、気晴らしに飲みにいくパブで、馬主という面白い世界の話に触発されて、思い立って自力で300ポンドの牝馬を購入。
夫の手を借りて厩舎を作り、仔馬を産ませる。母馬が出産と同時に死ぬという悲しみの後に全ての夢を託された、生まれながらの競走馬"Dream Alliance"が、街の人々による共同馬主の夢を乗せて走る。
田舎町の退屈な毎日を過ごす人達に、刺激と楽しく生きるためのヒントを与えた主催者ジャンの暮らしは、スーパーマーケットでのパート、両親の介護、何事にも無関心な夫に明け暮れるだけの毎日だっただけに、第二の人生ともいえる競走馬を育て、夢を追いかける日々を自ら作り出した勇気と度胸にまずは心を撃たれる。
美しいウェールズの風景。伝統ある競馬場で喜びや悲しみが渦巻く人々が行き交う世界。そして、競走馬の美しい疾走感。勝つか負けるかの過酷な天国と地獄。テンポ良く、退屈なシーンは一切ない。
例え共同馬主でも、素敵な社交界の一員としての楽しみをも描かれていた。
本作は事実に基づき作られた作品で、実際に調べてみると、2009年のウェルシュナショナルで、ドリームアライアンスが優勝した記録があった。
この映画をきっかけに、馬主という独特の誇り高き存在に惹かれた。
心地良い余韻のある素晴らしい作品。
