eigajikou

フォーリング 50年間の想い出のeigajikouのレビュー・感想・評価

4.7
私は、ランス・ヘリクセンと同い年の相当頑固な父と、認知症が進みつつある母が暮らす実家へ遠距離介護に通っている身なので、終盤まで切実すぎて心臓が痛くなった。全く他人事でない作品だ。
クライマックスでヴィゴが父親の状態を分かっていても、理性でコントロールできなくなり感情を剥き出しにしてしまったシーンでは、思わず涙がブワッと溢れてしまった。
そうなのだ、頭では感情的になってはいけないと分かっていても、時々、父や母の態度に感情的に反応してしまうことがある。すぐに自分が感情的になったらダメじゃないかと落ち込むのだけと。
でも、親子だからこそ似た所もあって我慢できない時もある…
私は子供の頃こんな家早く出て行きたいと思っていた。大学生になる時に家を出て、社会人になり結婚して家族を持ち、親からは独立したのに結局は今また親の面倒を見なければならなくなっていて、住んでいる所が遠く離れていても親子の関係は簡単には切れないものだと日々実感している。
老親に対して我慢できずに感情が爆発してしまうことがあってもいいんだよと、ヴィゴが本作で言ってくれている気がした。
近々父が面倒な手術をしなければならないので実家に頻繁に通っていて忙しくなり、自分自身も病気抱えていて疲れも出てるから、こんな時に見ることができた本作は本当にヴィゴからの暖かい励ましのように思えて嬉しくなった。

スヴェリル・グドナソンの保守的で野卑な感じの出し方がすごく上手くて、そして今のランス・ヘリクセンになりましたの説得力のある演出に唸った。
若い頃の行状から酷くて、こんなクソオヤジ死んでしまえ!って思わせるような男でも、そいつなりに妻や子供を愛しているんだよね、グドナソンとヘリクセンの名演とそれを引き出したヴィゴの演出力が素晴らしい。
大勢の子役たちもヴィゴの妹役ローラ・リニー、パートナー役テリー・チェンも良かった。
クローネンバーグ医師もこんなドクターいるいる感が流石。

製作、監督、脚本、音楽と八面六臂の活躍で本作完成させてくれたヴィゴに感謝の気持ちでいっぱい。
上映館少なくてひっそりと公開されている感じでもったいないと思う。
ヴィゴは生きてる俳優で一番好きな人。クローネンバーグ組への復帰作品「Crimes of the Future」も楽しみだし、またぜひ監督作品も作って欲しい。

『ファーザー』も素晴らしくて心臓に悪いような緊迫感があったけど、
大好きなヴィゴが作ってくれた本作は彼の人間性と才能が凝縮されていてファンとしては本当に嬉しいヴィゴの監督デビュー作だ。
ファンだから高得点つけるよ😼
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