CHEBUNBUN

最高の花婿 アンコールのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

最高の花婿 アンコール(2018年製作の映画)
3.5
【フランスで大ヒット!差別する側/される側のメカニズムここにあり!】
2014年にフランスで社会現象を巻き起こしたコメディ映画『最高の花婿』。この続編が昨年フランスで公開されました。前作でコートジボワール人が一族に加わり、ますます賑やかとなったヴェルヌイユ家に新たな騒動が勃発。花婿たちがフランスで受ける差別に嫌気がさして海外へ移住しはじめ、母マリー・ヴェルヌイユが哀しむという内容となっている。本作は、公開当時フランス本国にて『アベンジャーズ/エンドゲーム』と累計観客動員数を競い合っていました。キネマ旬報3月下旬特別号によれば、本作は6,711,618人と『アベンジャーズ/エンドゲーム』に約20万人差で負け、3位となったのですが、ヨーロッパ各国の観客動員数ないし興行収入ランキングにおいて軒並みディズニー映画が支配する中で、ローカル映画がここまで健闘したことはフランス映画の底力を感じます。

さて、3/27(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA他にて公開される本作を、配給会社であるセテラ・インターナショナルさんから、「是非ともブンブンさんに観てほしい!」とのことで一足早く観賞させていただきました。前作は『翔んで埼玉』的炎上スレスレな自虐と差別の狭間で笑いを引き起こすチャレンジングな作品でしたが、今回はさらに差別する側/される側のメカニズムを掘り下げていった内容となっていました。

フランス映画界は、『最強のふたり』の登場で大分、映画の中に移民が映るようになってきましたが、それでも白人至上主義に縛られている感じがします。フランス社会では、例えばパリを一度歩けば、アフリカ系から中国系、さらにはロマがいたりとアメリカ顔負けの人種のサラダボウルとなっています。そして、一見フランス人は移民と協調して生活しているように見えます。しかし、実際には小さな差別が至る所にあるのでは?とフィリップ・ドゥ・ショーヴロン監督は鋭い眼差しを向けていました。

アルジェリア出身のラシッド・ベナセムは「常に上着のボタンを開けていないと、テロリストに間違えられてしまう。ただ冬場は寒いんだよね。」と語る。一方、コートジボワール出身のシャルル・コフィは、シェイクスピアの『オセロ』の主人公は黒人(北アフリカのムーア人)なはずなのに白人が選ばれてしまうことに落胆している。

フランス社会における小さな差別にフラストレーションを蓄積していく花婿たちだったが、ハラル食ビジネスで世界進出を目指すダヴィド・ヴェニシュが「イスラエルへ移住しようと思っている」と発言したことで、皆が海外移住を念頭に入れ始めるのだ。

本作が面白いのは、どこへでも行けるAnywheresな人たちにフォーカスを当てながらも、差別の本質に辿り着いてないと悲劇が繰り返されてしまうことを軽妙なギャグで切り込んでいるところにある。例えば中国系のシャオ・リンは、自衛の為に武器屋でヌンチャクを見ているのだが、店員に「ヌンチャクをお探しですか?」と言われ怒る場面がある。店員は差別的感情がないにもかかわらず、ステレオタイプに見られたくない気持ちでシャオは怒ってしまう。ただ、別のシーンではマリーが一時的に受け入れた移民の男がチェーンソーを持っているだけで、シャオは手裏剣を投げつけてしまう。「差別されている」という強い意識が、別の差別を呼び、その差別には無頓着である構図を風刺しているのだ。

そして、映画は「自分の居場所じゃない」と思う移民に対し、「国は君たちを受け入れたが、文句ばかりいうじゃない」と批判しつつも、彼らが何故そう感じるのか?そしてそれは他の場所へ移ったところで解決する問題なのかを、4人の花婿の物語を混ぜ合わせることで掘り下げていく。語学もお金もある程度あり、行動力もありどこへでも行けるAnywheresな彼ら、しかし彼らの着地点は本当に天国なのだろうか?

2015年1月に起きたシャルリー・エブド襲撃事件以降、文化衝突が激しさを増し、ギスギスした世の中になってしまったフランス社会に俗な笑いと鋭い理論で、治療しようとするサプリメント映画でした。

日本でも近年、外国人労働者を大量に受け入れ、今やコンビニ、ファストフード店の店員は外国人が多くなった。そして度々、そういった外国人労働者に差別をする日本人が話題となる。それだけに、このフランスローカル映画の世界は全く他人事ではないと言えよう。

3/27(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA他にて公開されますので、興味ある方は是非劇場へ足を運んでみてください!