なちゅん

ナイトメア・アリーのなちゅんのレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
3.7
ああ、デル・トロ作品だなあ、という感じ。残虐で悍ましくて、寓話的で妖艶で美しい。

前半の「これがどう転ぶっていうの?」感が全体を冗長に感じさせてしまうところはあるけど、反対に、この前半の夢と悪夢の入り混じったような雰囲気が、まさしくデルトロ的でもある。
スプーキーショーに自分の可能性を見出してしまったスタンはある一瞬の選択を間違えただけで栄光から転落してしまう。騙し合いの頭脳戦なんかではなく、自分の言葉を神の言葉と勘違いしてしまったペテン師が騙し騙されて裏切られて見捨てられ、落ちぶれていく。ちゃんとピートの言うことを聞いて自制していれば、モリーの言うことに耳を傾けていれば、ジーナの言うことを信じる素直さがあれば、彼はまだヒトでいられたかもしれないのに。

Nightmare Alley。どこで出てくるのかしらと思ったけど、実際一言だけ出てきたけど、もしかしたらこの映画全てがそうだったのかもしれないと思う。
「俺はこんなんじゃなかった、こんなんじゃないんだ」という言葉はもしかして、とも思うけれど、それ以上に「そうなる運命だったんだ」と笑う姿とそのエンディングがめちゃくちゃ良かった。これ以外にないと思うほど完璧なエンド。
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