このレビューはネタバレを含みます
とてもよく練られたスラップスティックコメディだ。選挙での罵詈雑言のぶつけ合いは行ってみたらパイ投げに近いもんだからな。その無意味さ無毛さは本当に同じように見える。色々挟み込まれるギャグが一つ一つストーリー自体の伏線になっているところが素晴らしい。2回目を見ると本当によくできているのがわかる。
特に素晴らしいのが、個人的映画鑑賞史の中で「スティング」以来のびっくりツイストが味わえたことだ。「情婦」も入れて三大びっくりツイスト=どんでん返しものとして認定いたします。
今作で優れているのは全然別にテーマとかコメディ要素とかがてんこ盛りなため、そのことをまるで想像できなかったということがある。しかも途中でツイストに見せかけたトリックを仕掛けてやがるもんだから狡猾この上ない。
政治物パロディとしてよくできているのだけどバランスを取りたかったんだろうな。共和党=トランプ周辺の揶揄は映画の題材としてやり尽くしてしまっている以上、反対側の民主党の嫌われてたり来している部分を、今作は相当デフォルメして強調している。でもここまでしても共和党翼讃映画になっていないところが興味深い。
アメリカらしい、選挙制度そのものがお祭りになっているところを今作ではディスってるわけだが、選挙を堅苦しく捉えているのでそこまでも行きつけない日本人が見るとピンとこないところも多い。もう少し選挙自体のイベント感は盛り上がった方がいいわけで。行き過ぎるとこうなるということがわかっていさえすれば。
エンドロールでの専門家の解説は画期的なんじゃないか。「んなことあるわけない!」などと聞こえてきそうな声にあらかじめ「あり得る」と保険貼ってるところが面白かった。
価値観の違いや党派性を超えてこのような政治映画が作れるのだということが希望が見えるな。もっとやれもっとやれ!