雨丘もびり

情婦の雨丘もびりのレビュー・感想・評価

情婦(1957年製作の映画)
5.0
【検察側の証人】
「まぁ良いお天気だわぁ絶好の退院日和ですわねぇ霧の日が続くと日光のありがたみもひとしおですコトそれともまぶしすぎますかしら窓を閉めましょおか」
「...その口を閉めろ」

何回目かの見直し。大好きっ!
最初10分まじ本筋と関係ない夫婦漫才なのにずっと観ていたい。
でっぷりした不機嫌な老弁護士。受付のおばちゃんが泣いて出迎えてくれたり、37年務める執事がいたり、採算の取れない刑事事件ばかり引き受けていたりする人となりから、このウィルフレッド卿が主人公に相応しい人格者だとわかる。その嬉しさ!

「いいかげんにしないと杖で打つぞ」
「葉巻が折れますわ。。。杖に隠してるやつ」
「....告訴するぞ捜査令状も無しに」

裁判の裏で、いかにバレずにタバコや酒をせしめるかに悪知恵を働かせるウィルフレッド卿が面白可愛いw。

裁判シーンや結末などに、ワザとらしい演出も感じるけど、この物語全体が英国人の自虐になっていて、スコットランド人の頑迷さやドイツ人の威圧感/独尊性に差別感情を持っていたり、判事と検察官がズブズブな司法制度を揶揄してたり...メタ的なブラックユーモラスフィクションなので、コミカルなデフォルメが作品の深みになってる。
(そゆとこ踏まえずガワだけ真似るからペラいのよmtnkkさん!)

これからの映画ファンにこの楽しさを伝えるため、誰か上手にリメイクしてくれないかしら...とも思う映画なんだけどな。
でも、銀幕の向こう側をノスタルジックに愛でる白黒映画ではなく、映画の世界に腕尽くで引っ張り込むエネルギーを帯びた映画だから、配信サービスでもっと広まってほしい一本!

「荷物を戻し、タクシーも帰して」