【見逃せない話】
『WITNESS FOR THE PROSECUTION』(検察側の証人)観ました。
巨匠ビリー・ワイルダーの作品。
自分の中で法廷ものは『十二人の怒れる男』が頂点に君臨していたので、それを超えることはないだろう、と高を括っていた。
それがどうだ。
映画の教科書にすべきだ、と本気で思ってしまったのだから。
設定はいたってシンプル。
殺人事件の容疑者となった男が有罪か、それとも無罪か、裁判する話だ。
感想はそれ以上にシンプルだ。
おもしろかった。
「おもしろい」という言葉はこの映画のためにあるのではないか。
それくらい、おもしろかった。
どこがどうおもしろかったのか、などという陳腐な説明を聞くより、一刻も早く観るべきだ。
観た者には、最後の最後にとっておきのプレゼントが贈られる。
映画史上最高とも言うべきどんでん返しだ。
本編のラスト10分を観て、私たちは初めて罪の意味を知る。
処刑の意味を知る。
そして、愛の意味を知る。
私は、ビリー・ワイルダーの映画を一本も観ずに一生を終えるような、“贅沢”な死に方はできなかった。
これは、事件なのだ。
これから先どんな映画を観ても、「おもしろい」と簡単に言えなくなってしまったのだから。
ビリー・ワイルダー監督へ。
もうひとりの陪審員として本編を追いかけていたつもりが、いつの間にか“映画を見る目”を審理される立場になっていました。
観客でこんなにも遊んでくれてありがとうございます。
この映画が100年後も絶賛されていることに葉巻一箱を賭けたい映画ファンより。