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情婦のpicaruのレビュー・感想・評価

情婦(1957年製作の映画)
5.0
【見逃せない話】

『WITNESS FOR THE PROSECUTION』(検察側の証人)観ました。

巨匠ビリー・ワイルダーの作品。
自分の中で法廷ものは『十二人の怒れる男』が頂点に君臨していたので、それを超えることはないだろう、と高を括っていた。
それがどうだ。
映画の教科書にすべきだ、と本気で思ってしまったのだから。

設定はいたってシンプル。
殺人事件の容疑者となった男が有罪か、それとも無罪か、裁判する話だ。

感想はそれ以上にシンプルだ。

おもしろかった。

「おもしろい」という言葉はこの映画のためにあるのではないか。
それくらい、おもしろかった。

どこがどうおもしろかったのか、などという陳腐な説明を聞くより、一刻も早く観るべきだ。
観た者には、最後の最後にとっておきのプレゼントが贈られる。

映画史上最高とも言うべきどんでん返しだ。

本編のラスト10分を観て、私たちは初めて罪の意味を知る。
処刑の意味を知る。
そして、愛の意味を知る。

私は、ビリー・ワイルダーの映画を一本も観ずに一生を終えるような、“贅沢”な死に方はできなかった。

これは、事件なのだ。
これから先どんな映画を観ても、「おもしろい」と簡単に言えなくなってしまったのだから。

ビリー・ワイルダー監督へ。
もうひとりの陪審員として本編を追いかけていたつもりが、いつの間にか“映画を見る目”を審理される立場になっていました。
観客でこんなにも遊んでくれてありがとうございます。
この映画が100年後も絶賛されていることに葉巻一箱を賭けたい映画ファンより。
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