くさむすび

ファーザーのくさむすびのネタバレレビュー・内容・結末

ファーザー(2020年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

終始居心地の悪い映画だった。掴めたようで掴めず、引き離したようでコチラに迫ってくる。序盤から意味が分からなくて、見終わっても初見の状態だけじゃ分からない部分が多々ある。それでも、今年公開されたジョシュ・トランク監督『カポネ』で面白かった梅毒症状と現実を行き来するサイコ・ホラー的シーンをこの映画は97分ずっとやっていたので楽しかった。
認知症で情報が飛んでいる状態と、観客がポッと物語に入れられてフラットで見れる状態が一致し、主人公のアンソニーと観客の情報量が一致しているのがとても面白い。世界全体が敵に見えてしまうようなそんな構成も見事です。自分が見ているものも嘘なんじゃないかと怖くなった。さっき終わったはずのシーンの数分後、急にそのシーンの続きが始まったり、いつのまにか迷宮に入っていたかのような新鮮な映画体験。映画の楽しさが十分に溢れていた。家や内装が物語を語る。部屋の四角でまとまっている感じやドアなど、インテリアが意図的に整えられている感じが好みです。アンソニー・ホプキンスの堂々たる貫禄を見せつける名演、「全ての葉を失っていくようだ」という台詞の後のアンソニーはオスカー納得。その台詞のあと、窓越しに新緑が生い茂っている木を見せるラストカットを映す辺りまだ希望があることを映し出しているんじゃないかなと思った。
アカデミー賞作品賞候補全て見れた訳ではないが、この作品はレベルが違うなという印象。『ノマドランド』も良い映画だとは思うけど…。
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