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ファーザーのhymasuminのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
4.3
認知症患者の視線で描かれた映画。ちょうど私の母が認知症で施設入所の適応ではと病院から言われたところ。だから、家族の視線かつ認知症患者の視線の両面で観るしかなかった。
身の前にいる人が誰なのか、顔と人物が一致しなくなる、聞いた言葉もいつの誰の言葉か混乱する、夢を見ているようだけど夢じゃない、現実のように認知したけど現実じゃなかった、ああこんなふうに認知機能が壊れていくんだ。
自分の家だと思っているけど施設の部屋、それを朧げに知ったときの哀しさとやりきれなさ。私の母を施設に入れるわけにはいかないと強く思った。
ラストになってすすり泣いている観客が近くに数人いた。きっとその人たちは、自身の家族が認知症で施設入所中か、認知症を患って他界した家族がいるんだろうと、心の深いところの何かが弾けて泣いているんだろうと思った。大事な人の認知症が進行している私も同じ。
アンソニーホプキンスが本当に認知症を患っているように見えて、主演男優賞に相応しい、壊れていく老人を、私もいずれ辿るかもしれない生きることの哀愁を見事に見せてくれたと思います。
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