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ファーザーのcinecoroのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
4.7
誰とも時間を共有していない、肯定されないとは何と孤独で不安なことなのか。
今まで真剣に考えた事が無かったけど私たちが一定の秩序を保っていられるのは家族であれ知人であれ時間と記憶の共通認識があって初めて語る事ができるのだと思い知らされた。
アンソニーと同じ様に記憶と認識を揺さぶられ、不安に駆られ、猜疑心に悩まされる。こんな映画体験は初めてで、もうやめて〜と泣きたくなった。
誰もが自分の老いを考えざるを得ない話だけど、印象的だったのはママに会いたい、とさめざめと泣くところで、自分も老齢になってから本気で母親に会いたくなったらどうしよう。会えると信じているのにもう亡くなってるなんて悲しすぎる。
因みに自分の祖父、祖母ともに晩年は認知症だったけど彼らの目に私はどんな風に映っていたのだろう。
認知症の人の言動を決して否定してはいけないという事が、この映画で腑に落ちた気がした。
オリヴィア・コールマンもまた最高だったのだけど、父親は身体的にも精神的も娘に頼っているのに、口から出るのは悪態と妹への愛情ばかり。それでも父を支え続ける疲労と不安と愛情が入り混じったものが表情や身の振る舞いからわかりすぎるほどで素晴らしかった。
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