ファーザーのAliのネタバレレビュー・内容・結末

親の認知症をテーマにその精神的苦悩を介護者である娘と病状が進む父親の両面から描いている。「自分の親がなったらどうするか」という視点で見入ってしまう。

全編を通じて認知症となった父親の視点で進むため、認知症の意識混濁の世界を擬似体験させられている気分だった。頭に残っている印象的な出来事の記憶の断片を繋ぎ合わせて、辻褄の合わない違和感のある物語に仕上がっていく様は夢を見ている感覚に近いように思えた。

印象的なシーンは介護者である娘自身がもう精神的に限界に来ている時にふと正気に返る父親が娘に日々の感謝を告げるシーン。この感謝は娘の心を癒し慰めるものではなく、寧ろ呪縛のような残酷さをふと垣間見る。

余韻が強く残る紛れもない名作。