澪

ファーザーの澪のレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
3.9
アンソニー・ホプキンス目当てに鑑賞。

認知症当人の視点で描かれているため、ストーリーが前後したり登場人物がすり替わったり、巧みな映像表現により我々も認知症の疑似体験をさせられているようで、1時間半ずっと妙な感覚だった。どこまでが現実か分からない緊張感、記憶と空間の歪み、老いる事で情報処理しきれなくなる自分に対する恐怖、そして疑心暗鬼と思い込みによる記憶障害は加速していく......

認知症における記憶の操作は、当人も処理しきれないおぞましいものであり、永遠に終わらない螺旋階段のような絶望感を覚える。

ジャケットの和やかな雰囲気は作品の内容とは相反しているが、主人公が記憶している中での「ずっと記憶していたい思い出」だけを詰めたイメージが、この微笑んでいるふたりとなって表れていると思う。
澪