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キネマの神様のyukoのレビュー・感想・評価

キネマの神様(2021年製作の映画)
3.3
年齢を重ねた分”フィルム”の軋み感とも言うべきか、映画作品では、現在の姿を映す場面がなんとも、もどかしく感じる。回想シーンの方が、テンポ良く軽快。また、映画作品には、恋愛模様も雑然と混入されている気がして、映画愛を中心に家族の情愛や友情が描かれた原作とは要素の違いがある。原作マハさんはニューシネマパラダイスに物語の端を発し、どちらかというと今現在をフィーチャー。山田洋次さんはニューシネマパラダイスと東京物語を中心に映画作品そのものを創出したからなのかな、とも思った。時を重ねる視点が、原作では積層、映画作品では懐古、とまでは言わないけれど、原作は重ねてきた者の幾重の想いが、友情の交信で感動を誘うのに対して、映画作品では、昔は良かった、というメッセージにも取れてしまった…そういう大人の臍の曲げ方がストレートに表現されている、と言ってもいいのかもしれない。ただもちろん、映画愛は原作も映画作品も本物。想いは繋がっていく。だから、昔も今も、映画って最高だな、がずっと続いていくといいなと思いました。
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