YAEPIN

アシスタントのYAEPINのレビュー・感想・評価

アシスタント(2019年製作の映画)
3.7
この状況がピンと来ない私は恵まれているのだろう。

正直、主人公が新入社員だから雑務を押し付けられているのか、映画業界だからなのか、女性だからなのか、はたまた会長の好みではないからなのか、論点がいまいち掴みきれなかった。
彼女の立ち位置は、それら全ての集積によるものなのかもしれないが、登場する周辺人物はみな中堅で、少ないが女性もいるため、何が起因してこの待遇が生まれているのか分かりづらかった。

そして本作は2019年に撮影された作品であるが、本当に2019年のアメリカでこの労働環境が見て見ぬふりされているとは信じ難かった。
監督の体験を基にした作品であるのと、PCのOSがかなり旧式であることから、舞台はもう少し前の時代なのかもしれない。

とはいえ、無機質な色の蛍光灯や、鳴り止まない電話、不快なブザー音が確実に彼女を蝕んでいるのは言うまでもない。
いちいち咎めたてるでもない、うっすらとした理不尽が、一枚一枚彼女の精力を削っている様子を映像と音響で巧みに表現していた。
「ジェーン・ドウ」のような名もない仕事のために長時間労働をする彼女のことを、観ているこちらも理解できないし、恐らく彼女自身も理解できていないのだろう。

一方、本作の仕掛けがすごく意地悪だと思うのは、主人公自身も経歴や年齢で人を判断する側面があることを示している点だ。
ハラスメント相談室?的なところに所属する彼は、作中でも分かりやすいヒールであるが、社会における不平等の構造の複雑さや根深さを炙り出すキャラクターでもある。
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