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シサㇺのYAEPINのレビュー・感想・評価

シサㇺ(2024年製作の映画)
3.8
まさかの寛一郎くん2連チャン笑(ナミビアに出てるの知らなかった)
さすがに1本の映画として物足りなさすぎる脚本だが、アイヌ文化をしっかりと映像に収め、なおかつ広く楽しめるエンターテインメントに昇華させようという気概を感じる映画。
捌かれる鮭のはらわたを画面いっぱいに大写しにするガッツが素晴らしい。

そして、その鮭のシーンも含め、アイヌコタンでは常に虫の羽音が鳴っているのも印象的だった。夜に捕った鮭を翌日に外で捌くのだから、多少の虫が寄ってきて当然だ。
映画で虫の羽音と言うと、どうしても死や不幸を連想してしまうが、本作では不思議と自然との共生の象徴だと感じられた。
森のものはあるがまま、無理になんでも排除しようとせず、人間と自然の最大公約数を模索した生活なのだと思った。

主要の登場人物を演じた役者にアイヌルーツを持った人はいなそうだが、アイヌ語をこれだけ長く話すのは大変だっただろうと思う。覚えて発生するだけでも一苦労だったはずだ。
そしてアイヌ語話者が減っている中、それを監修するのには更なる根気が必要であり、制作陣が正しくアイヌの文化を表象しようという強い意志がなければ成り立たない映画だと感じた。

てっきりウポポイが制作に入っていると思いきや、舞台の白糠町が町を上げて全面バックアップしているそうだ。

「みんな同じ人間。争うのはやめよう」という子供でも分かる超シンプルなメッセージを真正面から提示していたのも良かった。
それが分かっていない人が多すぎるので、まずはこのスタート地点に立つことが重要だと改めて感じさせられた。

まあ「争うのは良くない」と言いつつ、主人公の孝二郎は武力の才が無く、映画としての派手さには欠ける。
代わりにある方法で松前藩の不当に立ち向かうが、せめめその結果や影響をきちんと提示して欲しかった。わざわざフィクションであることを冒頭に提示しているのだから、理不尽への抵抗をもう少し映像として観たかった。

主人公の兄を演じた三浦貴大は、知らない間に結構ぽっちゃりしていて、見た瞬間彼だと気が付かなかった。
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