Momo

アシスタントのMomoのレビュー・感想・評価

アシスタント(2019年製作の映画)
1.3
あらすじコピペ
2017年にハリウッドを発端に巻き起こった「#MeToo運動」を題材に、憧れの映画業界が抱える闇に気づいた新人アシスタントの姿を通し、多くの職場が抱える問題をあぶり出した社会派ドラマ。

「ジョンベネ殺害事件の謎」などのドキュメンタリー作家キティ・グリーンが初めて長編劇映画のメガホンをとり、数百件のリサーチとインタビューで得た膨大な量の実話をもとにフィクションとして完成させた。名門大学を卒業したジェーンは、映画プロデューサーを目指して有名エンタテインメント企業に就職する。業界の大物である会長のもとでジュニア・アシスタントとして働き始めたものの、職場ではハラスメントが常態化していた。チャンスを掴むためには会社にしがみついてキャリアを積むしかないと耐え続けるジェーンだったが、会長の許されない行為を知り、ついに立ちあがることを決意する。
***
派手でわかりやすい、パワハラセクハラの描写がある訳ではない。しかしだからこそ作り手が何を伝えたいのかが伝わる。
実際目の前で起こっている訳ではなくても「起こっていることは想像できる(知っている)がそれを黙認している」という空気感が見事に表されていた。
あらすじでは「立ち上がることを決意する」とあるが実際は立ち上がるというような派手な展開はなく社内の相談役的な人物に直接的な表現は避け
とっても控えめに相談をする、という描写。
そこでも「キャリアを積みたいでしょ?じゃあどうするかわかるよね?」という無言の圧力を受け既にすり減ってるのにさらに心がすり減る。

メモ
・男性社員の理不尽な八つ当たり(パワハラ)
・若い新人アシスタントが性的に搾取されているっぽいのは社内でもはや常習化しすぎていて黙認というレベルでもなく当たり前に誰も触れない。
さらに女性社員ですら「あの子ならきっとうまく利用するわよ」と同じ女性である人も無関心(に見える。)このセリフが一番びっくり刺さった。
・アシスタント、と言っても2ヶ月。だからこそ慣れてしまった社員たちが感じない違和感を繊細にキャッチしているのがわかりやすい。
もしかしたら他の社員たちも最初は違和感持っていたのか?
・冒頭のタクシーを利用して職場に行く場面が印象的。外は真っ暗でまだ公共交通機関も走っていない中で職場に行かねばならない、というブラック会社というのがわかりやすい。

・謝罪メールのときに他の社員がコピペのように「もう2度と失望させません」とか横からアドバイス言ってるはきっとそれがもうお決まりのことでこう言っておけば大丈夫というような彼らなりの生きる術でそういうのが当たり前になっている(意味のないお決まり謝罪。)ことが非常に気持ち悪い。

・この映画、言葉にして全て表すのではなくて「描写」で表現している場面が多くてそれがまたリアル。
たとえば給湯室でかきこむようにシリアルを食べていたり、会議室の片付けの時に残り物のパンを口に頬張っていたり。ああ、食べる時間すらままならないのか、と想像できる。

・それまでアシスタントの彼女のことを散々怒鳴っていたのに終盤でボスが人伝てに「あの子は優秀だ」と評価している場面。飴と鞭感がもうDVそのもの。

・特別な日ではない、日常の1日をシンプルに切り取っているようなドキュメンタリーに近い映画で、起承転結がある訳ではない。
ただただ1日が始まってまた終わる。特に事件がある訳でもない。
特別ではないからこそ、映画と同じように会社に忙殺されてこんな感じで働いてる人はきっとものすごくたくさんいるんだろううと思わせられる。

・主人公が親に電話したときに「昨日お父さんの誕生日だった」と聞かされて後で電話で「お誕生日おめでとう」というシーンもなんだか印象的。
親の誕生日さえ忘れてしまうくらい心身ともに疲弊しているんだ、というのがわかるシーン。

この映画で何か学ぶとか得るとかそういうことではなくて「これがほんのたった一部であること」「実際に起こっていること」だと”知る”ということができる。
Momo

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