不整脈、鉄過剰症、喘息、糖尿病、麻痺。低体重児で産まれた少女Chloe(Kiera Allen)は、幼い頃から多くの疾患と戦いながらも、地元の名門大学へ進学することを夢見て日々勉学に励んでいた。高校卒業を控えたある日、彼女は母親から渡された薬の中に《母親に処方されたはずの薬》が混じっている事に気が付く。
◆持病によるスリラー（ネタバレ有）
多くの小児疾患により、日常的に多剤服用を余儀なくされていた彼女。そんな彼女が母親から『製薬会社が倒産して薬が代わった』と差し出された緑色のカプセルに疑念を抱いたことから物語は走り始めます。
性格の悪い僕は、今作がサスペンス作品と知っていたので、めちゃくちゃChloeちゃんの事を疑ってかかりました。
☑︎ 母親を怪しく見せる為の演出ではないか
☑︎ 薬の飲み合わせが悪かったのではないか
☑︎ 断薬して病勢が強くなったのではないか
☑︎ 妄想障害になってしまったのではないか
兎に角Chloeちゃんの被害妄想や精神減弱を疑っていました。必死に薬剤名を突き止めようと手当たり次第に電話かけていた時も『お母さんはPTAの会合に参加してたっぽいけど、君には学校の友達がいないのかい？』なんて思ったし、心疾患に処方されるというトリゴキシンが《緑ではなく赤》だと判明した時も、家庭菜園しているトマトをバシッと映す演出が強すぎて『あー、この子はきっと色覚異常もあったんだな。』なんて失礼なことを思いました。これについては次のシーンで食事のプレートにトマトが盛られていたため半分却下しましたが。
緑のカプセルが犬用の筋弛緩薬だと判明した時も『薬剤師が間違えたんじゃ無いか？』と疑ったくらい。母親名とはいえ処方箋はトリゴキシンだったんだから、処方箋偽造だとしたら詰めが甘いなって。最初から薬剤名の偽造（ラドカイン→トリゴキシン）だけじゃなくて被保険者名も偽造（母親名→娘名）しとけよって話だし。
部屋に閉じ込められていた時も『錯乱した娘が薬局の時のように発作的な行動をしない様にしたんだな。でもちょっとやりすぎだぞ★ﾐ』くらいにしか思っていませんでした。電話線やコンセントが切られていた所でようやく『もしかして、このお母さん、本当に…、』と疑い始めました。
危機管理能力ないですね、私。
秒で薬漬けにされますね、私。
◆障碍によるスリラー（ネタバレ有）
両下肢の麻痺により車椅子で移動するため、彼女の移動には制限があります。また、喘息も患っているため、過度な運動は喘息発作を誘発してしまいます。バリアフリーでないと自由に移動することができない彼女がじわじわと追い詰められていき、車椅子を降りて匍匐前進すると喘息の発作が襲ってきてー。徐々に自由を奪われていく中、必死で逃げようとするのに上手く動けない彼女のもどかしさが観ているこちらをハラハラさせてくれます。
主演のKiera Allenが可愛い上に演技力がすごくて、作品にぐいぐいと引き込まれる一因でした。閉じ込められた部屋から屋根伝いに脱出するシーンは特に印象的。お母さん役を演じるベテラン女優のSarah Paulsonに全く引けを取らない迫力の演技でした。
◆母の病によるスリラー（ネタバレ有）
１型糖尿病も、喘息も、小児にみられる疾患です。出生時に心拍が止まっていた様子が映されていたので、後遺症で下肢に麻痺が残ってしまったとしても不自然では無いと思いました。小児で不整脈は心房中隔欠損症があれば症状として不思議ではありませんが、『ASD』ではなく敢えて『不整脈』と表記することに疑念を持ちながらもスルーしてしまっていました。
全ては後天的かつ人為的に引き起こされていたことに、絶句しました。病気だったのは娘のChloeではなく、母親のDianeだったというオチ。
代理ミュンヒハウゼン症候群。他者を傷つける事で自身に関心を向けさせる危険な精神疾患。ドクターショッピングをしていたり、障害のある娘と二人で頑張っていることを誇示したり、兆候は確かに作中の冒頭から随所に見て取れました。彼女の背中にも生々しい傷がありましたが、部位からして自傷行為ではないでしょう。壮絶な過去があったと推察しますが、それでも許される行為では無かった。Chloeのことは娘としてでは無く、愛玩動物として愛していたのですね。
ペットを飼っていない母子家庭で、母親がどのようにラドカイン（犬用の筋弛緩薬）の処方を受けることが出来たのかは不明ですが、娘を《愛玩動物》として見ていたことがしっかり強調されていたと思います。
＊雑記＊
『ラム』『ラン』と続けて観たので頭の中がシャンディ・ランデヴ。『アタル』を続けて観ようと思ったけど、ドラマを見てなかったから如何にもならないぜ。（言いたいだけ）
