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宇宙でいちばんあかるい屋根の特売小説のレビュー・感想・評価

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住宅街の、きっとまだ深夜ほどでもない夕景を空撮した開巻の色味の具合からして俺好み、傑作の予感に満ち満ちておりましたけれども。

隣の席の女子が大事そうにペンケースに仕舞っている今は使っていないシャーペンに関する逸話。

或いは。

行きずりの女の子がえっちの後に話してくれた、さっきカラオケで歌っていた曲にまつわる想い出。

そういった傍からしたら卑近な、けれど当人にとっては大事なエピソードを愛おしいものとして描いた素晴らしい映画でしたよね。

ラストシーンとエピローグに於ける、受け手が噛み締めて味わう余韻をこそ優先したような抑制の利いたスマートな演出がもう白眉も白眉でしたよ。

主人公がついつい足を向けてしまう、もしかしたらそれが一時的なものだと知っていたかもしれない、けれども掛け替えのない大事な場所、即ち宇宙でいちばんあかるい屋根ですけれども、その俗世間から切り離された感じの再現の仕方が、切り撮り方が、愛情たっぷりで以て本当に好い絵面でしたよ。

主演の娘さんも後に、そのキャリアが語られる際には必ず本作が挙げられるであろう、そういう見事な演技を見せておりましたよね。

殊にファミレスで彼女が泣き出す場面の、相手役の男子の反応も含めてその自然な空気感がもうほんと、微笑ましいものでしたよ。

俺絶対自慢気に言うもん、清原果耶が好いなんて事は俺は「宇宙でいちばんあかるい屋根」の頃から言ってたけどね、て。

総じて。

いわゆる出演者全員を好きになってしまう類いの、ほんと好い映画でしたよ。
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