富樫鉄火

宇宙でいちばんあかるい屋根の富樫鉄火のレビュー・感想・評価

3.5
20200913/シネリーブル池袋
桃井かおりが重要な役で出ているようなので、観てみた。
少女が家族や友人関係の悩みを乗り越えて、おとなへの第一歩を踏み出す、樋口一葉以来、小説や映画によくあるパターンの話。
今回は、桃井かおり扮する不思議な老婆が、少女の後押しをするのがポイント(「書道教室」で「後押し」役に出会う点が、韓国映画『はちどり』を思わせる。韓国側がこの原作小説を参考にしたのかもしれない)。
ところが、この老婆が、当初は超自然的な存在(魔女)の雰囲気で登場するのだが(少女が出した手紙を軽々と奪還してくるなど)、実は、かなり現実的な町内の奇人婆さんだと判明するなど、少々、設定がどっちつかずで、せっかくの桃井かおり起用の迫力が、薄れてしまったような気がした。
主役の少女は、決してうまい芝居ではないのだが、無理に大げさな演技をせずに、落ち着いて演じているところがよかった。
映画全体も、清浄感にあふれ、ミュージック・ビデオのように、とても気持ちよく観られた。
よくぞこの小説を、アニメでなく、実写で映画化したと思う。
この監督は、わたしががっかりした『新聞記者』のひとらしいが、このほうが、ずっといい。
いっそ、有名楽曲をモチーフにした音楽映画をつくってほしい。
富樫鉄火

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